売上はあるのに手元へ利益が残らず、どの数字から直すべきか迷っている飲食店オーナーへ。
この記事では「原価15%上昇に15%値上げ、その計算で粗利は残りますか」を、読み物ではなく、自店の数字で判断して次の行動を決めるための材料に変えます。最後まで読むと、最初に確認する数字、今週実行する1項目、専門家へ相談すべき境界が分かります。
【数値の読み方】
この記事内の数値は、出典を明記した統計を除き、改善を保証する実績ではありません。条件を理解するためのモデル計算・試算例です。実際の結果は、業態、立地、営業時間、客数、価格、原価、人員構成で変わります。

月曜の朝、仕入れ業者から届いたFAXに新しい単価が印字されているのを見て、電卓を叩きながら「じゃあうちも15%上げるか」と決めてしまったことはないだろうか。2026年8月は食品2,311品目が値上げされ、平均値上げ率は15%、前年同月比で品目数は約8割増、加工食品だけで1,419品目を占める(帝国データバンク調べ)。この数字を見て、多くの店が「原価が上がった分だけ、メニュー価格に上乗せする」という発想で値上げ幅を決めている。だがこの記事を読み終える頃には、値上げ幅を原価上昇額だけでなく客数の変化まで含めて計算し、値上げ後に粗利額が本当に増えるかどうかを自分の店の数字で確認できるようになっている。
「原価が上がった分だけ値上げ」が危ない理由
原価が15%上がったから価格も15%上げる、という判断は一見筋が通っているように見える。だが値上げは価格を上げるだけでなく、客数にも影響する。席数20・客単価4,000円・月間来店750組という想定モデルの店で考えてみる。原価率30%のメニューを15%値上げすると、客単価は4,000円から4,600円に上がる。ここで客数が変わらなければ月商は225万円増え、粗利額も増える。ところが値上げによって来店組数が5%減っただけで、増えた客単価分の効果はかなり相殺され、10%減れば粗利額はほぼ値上げ前と変わらない水準まで落ち込む。原価上昇分をそのまま価格に乗せる計算には、この「客数がどれだけ減るか」という変数がそもそも入っていない。
王将とグローバルダイニングの明暗が示すもの
同じ原材料・人件費の上昇局面でも、企業によって結果は割れている。王将フードサービスは2026年1〜3月期の営業利益が前年同期比52.8%減となった一方、グローバルダイニングは同時期に231.1%増益という対照的な決算を出した(フードリンクニュース報道)。この差を「業態が違うから」で片づけるのは早い。原価上昇分を価格転嫁できたかどうかだけでなく、値上げ後に客数と客単価がどう動いたかまで見て初めて、値上げが利益に効いたかどうかが分かる。転嫁率が高くても客数を落としすぎれば粗利は残らないし、転嫁率が多少低くても客数を維持できれば粗利額は積み上がる。値上げの成否を決めているのは、価格に乗せた割合そのものではなく、乗せたあとに何が残ったかという一点だ。
値上げ幅を決める前に見るべき3つの数字
値上げ幅を決める前に、次の3つを自分の店の数字で確認しておきたい。1つ目は原価上昇額そのものだ。仕入れ伝票を品目ごとに見直し、値上げされた品目とその上昇額を洗い出す。2つ目は許容できる客数減少率で、値上げ前の客単価・客数・粗利額をもとに「客数が何%まで減っても粗利額が値上げ前を下回らないか」を計算する。3つ目は値上げ幅ごとの粗利額シミュレーションで、5%・10%・15%と幅を変えたときに、客数が横ばい・5%減・10%減のそれぞれでどう粗利額が動くかを表にして比べる。この3つを並べると、原価上昇分をそのまま乗せるべきか、それより抑えるべきか、あるいは看板メニュー以外で吸収すべきかが見えてくる。数字で見ずに「みんな上げているから」で幅を決めると、値上げしたのに手元に残る利益が変わらない、という結果になりやすい。
今日からできる値上げ判断の手順
金曜19時、満席の店内で客単価は上がっているのに、会計時の表情が心なしか渋くなっている。そんな変化に気づいた店ほど、値上げ幅の根拠を数字で持っておく必要がある。実際の手順としては、まず今月値上げされた仕入れ品目と上昇額を一覧にし、次にその品目を使うメニューごとの原価上昇額を出す。そのうえで、値上げ幅を5%刻みで3パターン用意し、客数が横ばい・微減・減少した場合の粗利額をそれぞれ計算する。この一覧さえあれば、値上げ幅を決める会議は「感覚」ではなく「数字」で終えられる。
実際の数字を使ったシミュレーションと、値上げ幅ごとの粗利額の変化を1枚の表にまとめる手順は、有料note版でさらに詳しく解説している。自分の店の原価率・客単価を当てはめて使えるテンプレート形式なので、値上げ幅を検討中の店はあわせて確認してほしい。
まとめ
- 2026年8月は食品2,311品目が平均15%値上げ(帝国データバンク調べ)
- 原価上昇分をそのまま価格に乗せるだけでは、客数減の影響を見落とす
- 王将とグローバルダイニングの明暗は「転嫁できたか」でなく「値上げ後に何が残ったか」の差
- 値上げ幅を決める前に「原価上昇額」「許容できる客数減少率」「幅ごとの粗利シミュレーション」の3つを数字で確認する
値上げ幅の判断は、飲食店経営における原価・利益管理のコンサルティングでも特に相談が多いテーマだ。自店だけでは判断材料が揃わないという場合は、無料相談から数字を一緒に整理することもできる。
C’est parti&Hでは、原価計算・利益管理から採用・店舗運営の仕組みづくりまで、飲食店経営者の「なんとなく」を数字に変えるコンサルティングを行っている。値上げ幅の判断に迷ったときは、ひとりで抱え込まずに一度相談してみてほしい。
自店の場合を30分で整理したい方へ
「原価15%上昇に15%値上げ、その計算で粗利は残りますか」を自店へ当てはめるには、直近3か月の売上・仕入額・人件費をご用意ください。C’est parti&HのLINE無料相談では、数字を見ながら、最初に変える1項目と、今は触らない項目を整理します。
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