売上に対して原価率は合っているはずなのに、月末に利益が残らない。そんな小規模飲食店のオーナー向けに、今回は「理論原価」と「実際原価」の差から、廃棄・盛り付け・棚卸・仕入単価のどこに問題があるかを7日で切り分ける方法をまとめます。
結論から言うと、レシピ表の原価率だけでは現場のロスは見えません。実際に使った原材料費と、販売数どおりなら使うはずだった原材料費を分けて計算すると、値上げの前に直すべき損失が見えてきます。
結論:原価率は「高い・低い」より差額を調べる
見る数字は次の3つです。
- 実際原価:月初在庫+当月仕入-月末在庫
- 理論原価:商品ごとの販売数×標準原価の合計
- 原価差異:実際原価-理論原価
原価差異が大きければ、販売価格だけでなく、盛り付け量、仕込み廃棄、期限切れ、棚卸、レシピ原価の更新漏れを確認します。まだ商品別の売上と粗利を整理していない場合は、先に飲食店のABC分析で対象商品を1品に絞ってください。
実際原価を棚卸から計算する
仕入金額だけを原価として扱うと、月末に残った在庫まで費用に含めてしまいます。反対に、前月から持ち越した在庫を使っても、当月仕入だけではその使用分が抜けます。そこで、実際原価は次の式で計算します。
実際原価=月初在庫+当月仕入-月末在庫
たとえば、月初在庫50万円、当月仕入120万円、月末在庫42万円なら、実際原価は128万円です。料理売上が400万円なら、実際原価率は32%です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月初在庫 | 500,000円 |
| 当月仕入 | 1,200,000円 |
| 月末在庫 | 420,000円 |
| 実際原価 | 1,280,000円 |
| 料理売上 | 4,000,000円 |
| 実際原価率 | 32.0% |
これは計算例です。消費税の扱いと集計範囲をそろえ、ドリンク売上と料理原価を混ぜないようにしてください。
理論原価を販売数から計算する
理論原価は、レシピどおりに作り、廃棄や過剰盛り付けがなかった場合に必要な原材料費です。各商品の「販売数×1食当たり標準原価」を合計します。
同じ月の理論原価が108万円なら、理論原価率は27%です。実際原価128万円との差は20万円、原価率では5ポイントです。この20万円を「値上げが足りない」で終わらせず、どの工程で発生したかを調べます。
| 比較 | 原価額 | 原価率 |
|---|---|---|
| 実際 | 1,280,000円 | 32.0% |
| 理論 | 1,080,000円 | 27.0% |
| 差異 | 200,000円 | 5.0ポイント |
原価差異の原因を5つに分ける
1.盛り付け量がレシピより多い
肉、魚、チーズ、ソースなど、単価が高く目分量になりやすい食材から、3食分を実測します。スタッフを責めるためではなく、標準量が現場で再現できるかを見る作業です。
2.仕込みと保存でロスが出ている
皮のむきすぎ、切り落とし、作りすぎ、期限切れ、解凍後の未使用を分け、重量と仕入単価を記録します。消費者庁の2025年ガイドブックでも、外食産業の食品ロスの主な要因として作りすぎと食べ残しが示されています。
3.棚卸数量や単位がずれている
「1本」「1袋」「1kg」が混在すると差が出ます。高額食材だけでも単位をそろえ、未開封と開封済みを分けて数えます。月初と月末で同じ担当・同じ時間帯・同じ数え方にすると比較しやすくなります。
4.レシピ原価が古い
仕入価格や内容量が変わっても、レシピ表が以前のままなら理論原価が低く出ます。帝国データバンクは2026年9月の主要食品メーカー195社による値上げを4,923品目と集計しています。納品書の最新単価とレシピ表を突き合わせてください。
5.まかない・サービス・試作が未記録
売上を伴わない食材使用も実際原価には含まれます。まかない、サービス提供、試作、返品を別欄に記録すると、原因不明の差を減らせます。無断使用と決めつけず、まず記録の仕組みを確認します。
7日で原因を切り分ける手順
- 1日目:ABC分析から、売上または使用量が大きい商品を1品選ぶ
- 2日目:最新納品書で1食当たり標準原価を更新する
- 3日目:盛り付けを3食分量り、標準量との差を確認する
- 4日目:仕込み廃棄を食材別に量り、金額に換算する
- 5日目:在庫の数え方と単位を統一する
- 6日目:まかない・サービス・試作を別記録にする
- 7日目:差異の最大原因を1つだけ改善し、次の7日と比べる
差異の原因が価格設定にあると確認できたら、値上げ・セット化・廃止の3択で、利益と販売数の変化を試算します。原価差異を残したまま全品を一律値上げすると、現場ロスと価格問題を混同します。
自分でできる範囲と、相談した方がよい基準
1店舗で対象商品を1品に絞り、納品書・販売数・棚卸をそろえられるなら、まずは上の7日間を自店で試せます。
一方、次のどれかに当てはまる場合は、数字の整理から第三者を入れると進めやすくなります。
- POSの商品名とレシピ名が一致せず、理論原価を作れない
- 月初・月末在庫がなく、実際原価を計算できない
- 複数店舗やセントラルキッチン間の移動が記録されていない
- 差異が20万円のように大きいが、原因別の金額に分けられない
- 値上げとロス削減のどちらを先にするか判断できない
まとめ:値上げ前に、原価差異の発生場所を見つける
原価率が高いときは、実際原価と理論原価を分けてください。差額が見えれば、仕入価格、盛り付け、廃棄、棚卸、記録のどこから直すか決められます。最初から全商品を管理せず、1品・7日から始めるのが現実的です。
LINE無料相談の対象:売上はあるのに利益が残らず、実際原価と理論原価の差を店舗別・商品別に整理したい飲食店オーナーです。相談では、差異の計算、原因の優先順位、値上げかロス削減かの判断を整理します。直近1か月の売上、仕入、月初・月末在庫、主力商品の販売数とレシピ原価をご準備ください。内容を確認した後、自己対応できる範囲と必要な支援を分けてご案内します。

