赤字が3か月続き、「ランチをやめて夜だけにすれば楽になるのでは」と考えている小規模飲食店のオーナーへ。営業時間を減らしても、家賃や社員給与がそのままなら、売上だけが減って赤字が広がることがあります。この記事では、ランチを続ける・縮める・休む判断を、失う売上と実際に減らせる費用で整理します。
飲食業界20年、元統括料理長として40拠点のマネジメントに携わってきた、若山弘貴です。私は、営業時間を見直すときは「暇そうか」よりも、その営業をやめた後に店全体でいくら残るかを確かめることを勧めています。以下の金額は説明用の仮定であり、私の支援実績や改善保証ではありません。
ランチをやめる判断は「配賦後の赤字」だけで決めない
家賃や社員給与を昼と夜に割り振ると、時間帯ごとの負担が見えます。ただし、ランチに割り振った家賃が10万円でも、ランチをやめたら家賃が10万円下がるわけではありません。
中小機構のJ-Net21は、費用を売上に応じて変わる変動費と、売上にかかわらず発生する固定費に分け、売上から変動費を引いた限界利益が固定費の回収に貢献すると説明しています。この考え方を営業時間の判断に使うと、配賦した費用と、中止によって消える費用を分けることが必要です。出典:J-Net21「損益分岐点の計算方法と経営改善に向けた活用方法」
店全体の必要売上が不明な場合は、先に飲食店の損益分岐点と1日客数の計算で、全店の黒字ラインも確認してください。
今日集める数字は3つです
1.やめる時間帯の売上
直近4週間を目安に、曜日別・時間帯別の売上を出します。平均だけではなく、平日と土日、通常日とイベント日を分けましょう。POSの集計が会計時刻基準の場合、ランチ客の退店が次の時間帯にずれるため、注文・来店時刻との違いを確認します。
2.その売上がなくなると減る変動費
食材の使用額、該当する決済手数料、持ち帰り容器などです。仕入額をそのまま使わず、在庫の増減と廃棄を確認します。夜に使う食材や仕込みまで削減額に入れないでください。売上と費用の税込・税抜の扱いも揃えます。
3.営業をやめれば実際に減らせる費用
減らせる勤務時間の賃金、追加で使っている光熱費、昼だけの外注費などを確認します。社員が同じ時間に出勤する、昼を閉めても夜の仕込みをする、といった場合は、その費用は残ります。冷蔵庫など常時稼働する設備の電気代も、営業時間の割合で丸ごと減る計算にはしません。
Squareの公式ヘルプでは、勤務時間・休憩時間・人件費を含むタイムカードや、売上高人件費比率のレポートを案内しています。利用中のレジ・勤怠に同様の機能があれば使い、なければ売上表と実際の勤務記録を並べれば始められます。利用条件は各サービスで確認してください。出典:Square「スタッフのタイムカードとスケジュールレポートを表示する」
計算例:ランチ売上60万円をなくすとどうなるか
次は、1か月のランチ売上60万円、対応する変動費率35%、中止すれば追加で減らせる費用25万円の架空の計算です。変動費21万円と追加削減費25万円は重複していないものとします。夜の売上への影響や変更にかかる費用は、まずゼロと仮定します。
- 失う売上:600,000円
- 減る変動費:600,000円×35%=210,000円
- それ以外に減らせる費用:250,000円
中止による月間利益の変化=210,000円+250,000円−600,000円=−140,000円
この条件では、ランチをやめると店全体の利益が月14万円悪化します。ランチは、上記の費用を引いた後でも、残る家賃や社員給与の負担に14万円分貢献しているからです。
減らせる費用が違えば結論も変わります
- 追加で減らせる費用が25万円:利益は14万円悪化。
- 追加で減らせる費用が39万円:利益の変化は0円。
- 追加で減らせる費用が45万円:利益は6万円改善。
この例の比較境界は、売上60万円−変動費21万円=39万円です。業界共通の基準ではありません。45万円を削減できるケースを3か月放置すれば、ほかの条件が同じなら18万円の改善機会を失う計算になります。一方、25万円しか減らない店が中止を3か月続ければ、42万円悪化する計算です。
実際には、夜への来店移行による利益の増減、仕込みの外注化、告知費、廃棄、解約費なども加えます。売上が夜に移ると見込む場合は、移行する売上そのものではなく、対応する費用を引いた利益への寄与を加えてください。借入元金の返済を含む現金の確認は、返済後の資金余力を整理する記事と合わせて行います。
全日中止の前に、1つの曜日・時間帯で検証する
私は、比較する条件を一度に増やさず、まず1つの曜日や時間帯に絞る進め方を勧めます。例えば「火曜のランチだけ」「平日の開店直後だけ」を候補にします。メニュー変更や値上げを同時に行うと、何が利益に影響したのか判別しにくくなります。
試行するなら、従業員との調整と既存予約への対応を済ませ、店頭・予約ページ・Googleビジネスプロフィールなどの案内を揃えます。仕込みと清掃の時間は削減したつもりにせず、実際に必要な時間として残します。
短縮後に見るのは店全体の利益と実働時間
2〜4週間を試行期間の目安にし、同じ曜日の変更前と、売上・変動費・実際の人件費・夜の売上・オーナーの実働時間を比べます。この期間で必ず結論が出るわけではありません。天候、祝日、予約団体、季節差が大きければ、その影響を分けて記録します。
試行前に「全店の利益が悪化した場合は戻す」「仕込み残業が増えた場合は時間を再設計する」など、自店の中止条件も決めましょう。オーナーの負担軽減は大切な判断材料ですが、休めた時間を架空の人件費削減として利益に足すことは避けます。
自分で進める範囲と、相談を使う境界
売上・費用・勤務時間を自分で把握でき、変更を戻せる範囲なら、小さな試行から進められます。一方、昼と夜の共通仕込みが多い、社員給与が残る、夜への送客効果が大きい、資金が短期間で不足する、といった場合は、時間帯だけで結論を出さず全店の収支を整理してください。
勤務条件の変更や契約の扱いに判断が必要な場合は、契約内容を確認し、必要に応じて社会保険労務士などへ相談します。入出金予定から支払不足が見えている場合は、試行結果を待たず、金融機関などへの相談も並行して進めます。
実行チェックリスト
- 直近4週間のランチ売上を曜日別に確認した。
- 売上と費用の税込・税抜の基準を揃えた。
- 食材使用額と仕入額、昼と夜の共通費用を分けた。
- 減らせる人件費を、実際に減る勤務時間で確認した。
- 残る家賃・社員給与を削減額に入れていない。
- 夜の利益への影響と、変更時の一時費用も確認した。
- 試す曜日・期間・戻す条件を決めた。
- 従業員・既存予約・営業時間表示への対応を確認した。
まとめ:営業時間を減らす前に、減る費用を確かめる
ランチ営業の中止で利益が増えるかは、失う売上を、減る変動費と実際に減らせる費用で補えるかによって変わります。まず3つの数字を書き出し、店全体の利益とオーナーの負担を別々に確認してください。
赤字が3か月続き、ランチ継続・短縮の優先順位が決まらない方は、C'est parti&HのLINE無料相談をご利用ください。相談では、どの数字が不足しているか、営業時間と原価・人件費のどこから整理するかを確認します。
直近3か月の売上・仕入額・人件費、メニュー表、シフト表を分かる範囲で準備し、時間帯別売上があれば加えてください。最初のメッセージは「ランチ営業の見直し相談」と、業態・営業日・困っている点で大丈夫です。
相談で課題と必要資料を整理し、有料支援が必要な場合だけ範囲と見積もりをご提案します。無料相談後の契約は必須ではありません。詳細な利益構造診断や実行支援の範囲は、相談時に確認します。
出典・確認日:2026年9月6日。サービスと相談の流れはC'est parti&Hの料金・支援範囲を確認しています。本文の計算例、3つの確認項目、試行期間は筆者による判断整理の提案です。

