原価率という1つの数字だけで値上げ幅を決めると、実は一番稼いでいるメニューの客数を落とします。この記事を読み終える頃には、原価率でなく「メニュー単位の粗利額」で値上げ対象を選ぶ手順が1つ手に入ります。
23時のレジ締め後、伝票の束を前に電卓を叩きながら「原価率が高くなってきたから、来月から全メニュー一律3%値上げ」と決めた経営者は少なくないはずです。金曜19時、2回転目が読める店ほど、実はその判断が裏目に出やすいのです。
原価率30%はもう目安にならない
食材や物流コストの高騰を受けて、原価率の実勢は30%から36〜37%程度まで上がってきていると複数の業界メディアが報じています。2025年は飲食料品の値上げ品目数が前年比64.6%増の2万609品目に達し、仕入れコストが前年より10%以上増えた飲食店は全体の約7割にのぼるという調査もあります。原価率が高くなること自体は、もう「うちの店だけの問題」ではありません。
問題は、原価率が上がったときに多くの店がとる対応です。全体の原価率という1つの数字だけを見て「じゃあ全メニュー3%値上げ」と決めてしまう。この一律値上げが、実は店の利益構造を壊します。
原価率でなく「粗利額」で見る
席数20・客単価4,000円という想定モデルで考えてみます。ある居酒屋の看板メニュー(原価率45%・売価1,200円・月間300食)は、原価率だけ見れば「儲からないメニュー」に映ります。ですが実際の粗利額は1食660円、月198,000円です。一方、原価率22%のドリンクメニュー(売価500円・月間200杯)は粗利額390円、月78,000円にとどまります。
原価率という数字だけを見ると、ドリンクの方が「優秀」に見えます。ですが月間の粗利額を稼いでいるのは看板メニューの方です。この看板メニューの価格をむやみに上げれば、原価率は下がっても、客数が落ちて粗利額の総額はむしろ減りかねません。原価率が高いメニューほど「集客商品」として来店動機になっていることが多いからです。
大切なのは、メニューを「原価率」で並べるのではなく「粗利額×注文数」で並べ替えることです。それだけで、値上げすべきメニューと、価格を守るべきメニューが分かれて見えてきます。
値上げ以外にできる3つの対策
一律値上げの前に、次の3つを見直すだけで原価率を1〜3ポイント改善できることがあります。
- 仕入れ先を1社に固定せず、主要3品目だけでも相見積もりを取る
- 看板メニューは価格でなく盛り付け量(ポーション)を数g単位で見直す
- 原価率の低いサイドメニューやドリンクの注文率を上げる導線をメニュー表の並び順に作る
これらはどれも、看板メニューの価格を据え置いたまま原価率を下げる方向の対策です。値上げは、この3つを試したあとの最終手段として残しておく方が、客数への影響を抑えられます。
メニュー単位の粗利額を今日から見える化する
全メニューを見直す必要はありません。まずは売上上位10品目だけで構いません。それぞれの原価率・売価・月間注文数を並べ、「粗利額×注文数」で並べ替えてみてください。上位に来るメニューが、本当に守るべき看板メニューです。逆に下位のメニューこそ、値上げやメニュー構成の見直しの候補になります。
このシミュレーションを実際の数字で1店舗分やってみると、原価率だけを見ていたときとは違う景色が見えてきます。実際の数字を使ったシミュレーションと、原価率37%時代でも粗利を落とさなかった店の事例は、有料note版で詳しく解説しています。
まとめ
- 原価率の実勢はすでに30%でなく36〜37%
- 全メニュー一律値上げは、稼ぎ頭の客数を落とすリスクがある
- 原価率でなく「粗利額×注文数」でメニューを並べ替える
- 値上げの前に、仕入れ先・ポーション・メニュー構成の3つを見直す
- まずは売上上位10品目だけで粗利額を可視化する
原価率の管理やメニュー構成の見直しは、数字を並べるだけでは終わりません。自店の客層や立地に合わせた優先順位づけまで含めて、アッシェ企画では飲食店経営者の伴走支援を行っています。ご興味があれば、お気軽にご相談ください。


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