
金曜19時、外国人観光客の4人組がテーブルに着く。スタッフが多言語メニューを渡し、注文を取り、会計を済ませる。それで対応は完了した気になっていないだろうか。この記事を読み終える頃には、同じ客組から得られる客単価を、今日のオペレーションのまま引き上げるメニュー構成の直し方が1つ手に入る。
「多言語メニューを作った」で対策が止まっていないか
訪日外国人の1人あたり飲食店単価は、2023年12月の5,398円から2024年7月には7,002円まで、8カ月で約1.3倍に伸びた(ジャパンチケット調べ)。それでも、来店予約を受け付ける飲食店のうち「インバウンド需要を十分に取り込めている」と答えたのは25.4%にとどまり、残る74.6%は取りこぼしている。多言語メニュー、キャッシュレス決済、口コミ対応はいずれも”入口”の整備であって、店に入ったあとにどれだけ払ってもらうかという”中身”の設計にはほとんど手がついていない。
客単価7,002円が意味する機会損失の正体
席数20・客単価4,000円の想定モデルで考えてみる。外国人客が月間来店数の1割、仮に月300組のうち30組を占め、単価が日本人客と同じ4,000円のまま据え置かれているとする。ここを7,000円水準まで引き上げられれば、その30組だけで月9万円、年間で約108万円の差になる。原価や人件費を増やさず、同じ客数・同じ営業時間の中で生まれる差額だ。この差額を取りに行くかどうかは、多言語メニューの有無ではなく、メニュー構成の設計で決まる。
メニュー構成を変える3つの視点
1. 「量」でなく「体験」に値段をつける
大盛りや食べ放題で単価を上げようとすると、原価が比例して膨らむ。そうではなく、目の前で仕上げる、写真映えする盛り付けにする、限定食材を使うといった「体験」に価格差をつけると、原価率を抑えたまま単価だけを伸ばせる。
2. 会計時の一言をオペレーションに組み込む
「Would you like to add dessert?」——この一言をレジ担当の動作として決めておくだけで、追加注文が発生するようになった店がある。多言語メニューに載せるだけでは読まれない。声に出して聞かれて初めて、注文になる。
3. 曜日・時間帯でなく「体験差」で価格帯を分ける
インバウンド客が集中する時間帯に、通常メニューとは別に「体験コース」を1つ用意する。価格差別ではなく体験の違いとして提示すれば、外国人客・日本人客のどちらにも自然に選んでもらえる。
今日の営業後にまずやる1つの行動
今日の営業後、レジ横に置く一言カードを1枚作ってみてほしい。「Would you like to add dessert or a drink?」と書いた小さなカードを、レジ担当の目に入る場所に置くだけでいい。多言語メニューを作り直すより先に、今日から効果測定を始められる。
今回のモデルは席数20・客単価4,000円という条件で計算したが、実際の店舗ではメニュー原価や客層によって数字は変わる。自分の店の席数・客単価・外国人客比率を当てはめて機会損失を試算する方法と、実際に単価を伸ばした店の数字の変化は、有料note版で詳しく解説している。
まとめ
- 訪日客単価は8カ月で1.3倍(5,398円→7,002円)に伸びているが、74.6%の店が取り込めていない
- 多言語メニュー・キャッシュレスは”入口”の対策。単価を伸ばすのは”中身”のメニュー構成
- 「量」でなく「体験」に価格をつけると、原価率を抑えたまま単価を伸ばせる
- 会計時の一言をオペレーションに組み込むと、多言語メニューだけより注文が増える
こうしたインバウンド・集客まわりの見直しは、SNS・口コミ集客の支援メニューでも個別に相談を受け付けている。
アッシェ企画では、飲食店の原価計算・メニュー設計・インバウンド対応まで、現場のディテールに基づいた伴走支援を行っている。まずは自店の状況を整理したいという方は、料金プランから気軽に相談してほしい。

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