
金曜19時、満席のピークで届いた仕入れ先からの値上げ通知に、目を通す間もなく次の注文が入る。今月でもう3回目だ、と思いながら伝票を脇に置く——そんな場面が、いまの飲食店では珍しくない。
この記事を読み終える頃には、値上げだけに頼らずに食材費の上昇を吸収する、原価とメニュー構成の見直し方が1つ手に入る。
対策の1位は「値上げ」。でもそれだけでは足りない理由
2026年7月は食品の値上げ品目が2,566品目に達し、値上げ1回あたりの平均改定率は11%という調査結果が出ている(帝国データバンク調べ)。飲食店ドットコムが会員282人に行った調査でも、仕入れ総額が前年より11%以上増えたと答えた店は66.7%、何らかの上昇を感じている店は90.8%にのぼる。対策として最も多く選ばれているのは「既存メニューの値上げ」で62.1%。効果があるのは事実だが、上昇分をそのまま価格に転嫁しようとすると値上げ幅が大きくなりすぎ、結局は客数が落ちて利益が残らないという相談を、コンサルの現場でもよく受ける。
影響が一番大きいのは「米」。仕入れ先を固定したままにしていないか
食材費高騰の影響が最も大きいと感じている食材は「米」で55.7%、次いで肉類46.5%、野菜41.8%という結果が出ている。主食・主菜級の食材ほど、価格の振れ幅がそのまま経営に響く。ここで見落とされがちなのが、仕入れ先やロットを何年も同じ条件のまま続けている店の多さだ。対策として「仕入れ先やルートの変更」を挙げた店は19.9%にとどまり、値上げに比べると手薄になっている。米や主要な肉類だけでも複数の仕入れ先から見積もりを取り直すと、条件が数年前のまま据え置かれていたことに気づくケースは少なくない。
値上げ以外に効く、現場でできる3つの調整
値上げ一辺倒にしないための対策は、大きく3つに整理できる。
- 仕入れ先・ロットの見直し:主要食材(米・肉類・野菜)だけでも年1回は相見積もりを取る
- ポーションの再設計:品質を落とさず、盛り付け量と原価のバランスを数値で見直す
- 新メニューの開発:原価率の低い食材を主役にした一皿を看板メニューの隣に置く
23時、レジ締め後に伝票の束を前に電卓を叩きながら、来月の発注数を決める。その時間を「値上げするかどうか」だけの判断で終わらせず、上の3つを組み合わせて原価率のライン自体を見直す発想に変えると、値上げ幅を抑えながら利益を守りやすくなる。
原価率のラインは「席数・客単価」の条件込みで考える
仮に席数20・客単価4,000円の店で、原価率が本来30%のところ、仕入れ高騰で33%まで上がっていたとする。この3ポイントの差は、月商300万円の店なら月9万円の利益差に相当する。値上げだけで全額を客に転嫁しようとすると値上げ幅が大きくなるが、仕入れ先の見直しとポーション調整で1〜2ポイントを吸収できれば、値上げ幅は小さく済み、客離れのリスクも下げられる。実際の数字を使ったシミュレーションと、原価率を段階的に戻す手順は、有料note版でより詳しく解説している。
まとめ:食材費高騰を「値上げ一択」にしない
- 仕入れ総額11%以上増は66.7%。対策の1位は値上げだが、それだけでは客離れのリスクが残る
- 米・肉類・野菜など影響の大きい食材ほど、仕入れ先の見直しが手薄になりがち
- 仕入れ先・ポーション・新メニュー開発の3つを組み合わせ、値上げ幅を最小限にする
原価率とメニュー構成の見直しは、感覚だけで進めると数字が合わなくなりやすい部分でもある。アッシェ企画では、こうした原価計算・メニュー構成の見直しを、現場の数字をもとに一緒に整理するところから支援している。
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