赤字が続き、「あと月商をいくら増やせば黒字になるのか」「1日何人のお客様が必要なのか」が分からない小規模飲食店オーナーへ。
この記事では、損益分岐点売上高を計算し、月商、1日売上、1日客数まで落とし込む手順を解説します。計算後は、客数を増やす、変動費率を下げる、固定費を見直すという3つの方向から、最初に検証する施策を1つ選べます。
私は飲食業界に20年携わり、元統括料理長として40拠点のマネジメントを経験しました。現場では「売上を上げよう」だけでは行動が曖昧になります。必要売上を1日客数まで分解すると、予約数、営業時間、客単価、メニュー構成、人員配置のどこを直すか判断しやすくなります。
飲食店の損益分岐点は、赤字を止める最低売上の目安
損益分岐点売上高とは、売上高と費用が一致し、利益が0になる売上高です。売上がこの金額を上回れば利益が出て、下回れば赤字になるという境目です。
2025年版小規模企業白書では、小規模企業の損益分岐点比率は95.8%と示されています。これは飲食店だけの数字ではありませんが、小規模企業は売上減少への耐性が相対的に低いという資料です。損益分岐点比率が100%に近いほど、少しの売上減で赤字へ入りやすくなります。
また、帝国データバンクの2026年7月倒産集計では、「飲食店」の倒産は前年同月74件から93件へ増えました。この数字だけで自店の判断はできませんが、販売不振やコスト上昇を放置せず、自店の黒字ラインを早く把握する理由にはなります。
損益分岐点売上高の計算式
中小企業基盤整備機構のJ-Net21は、損益分岐点売上高を次の式で示しています。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
「1 − 変動費率」は限界利益率です。別の書き方では、次の式になります。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
変動費に入れるもの
変動費は、売上の増減に連動して増減する費用です。飲食店では、食材費、テイクアウト容器、決済手数料、デリバリー販売手数料などが候補になります。
ただし、契約の最低料金や固定部分がある費用は、全額が変動費とは限りません。直近3カ月の売上と費用を並べ、売上と一緒に動く部分だけを分けます。
固定費に入れるもの
固定費は、売上が増減しても一定的に発生する費用です。家賃、固定給、リース料、通信費、顧問料などが候補です。日本政策金融公庫は、変動費か固定費か判断できない場合、固めに計算するため固定費として考える方法を紹介しています。
アルバイト人件費、水道光熱費、広告費のように固定部分と変動部分が混ざる費用は、店の契約と運用に合わせて分けます。迷う費用が大きい場合は、税理士などに会計上の扱いも確認してください。
飲食店の損益分岐点を1日客数まで出す5ステップ
1.直近3カ月の月商と費用をそろえる
単月だけでは季節要因や臨時支出に左右されます。直近3カ月の損益計算書、売上日報、決済明細、給与明細、家賃・リースの支払額をそろえます。
2.変動費率を計算する
変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
月商360万円、変動費126万円なら、変動費率は35%、限界利益率は65%です。
3.損益分岐点売上高を計算する
毎月の固定費が260万円なら、損益分岐点売上高は次のとおりです。
260万円 ÷ 65% = 400万円
現在の月商360万円との差は40万円です。ただし、この40万円がそのまま利益不足額ではありません。現在の限界利益は234万円なので、固定費260万円との差である26万円が簡易的な営業赤字です。売上を40万円増やすと変動費も増えるため、両方を区別します。
4.1日売上へ分解する
月26日営業なら、黒字ラインとなる1日売上は次のとおりです。
400万円 ÷ 26日 = 約15万3,846円
現在の1日平均売上は、360万円 ÷ 26日 = 約13万8,462円です。1日あたり約1万5,384円の不足です。
5.1日客数へ分解する
客単価が1,250円なら、必要客数は次のように計算できます。
約15万3,846円 ÷ 1,250円 = 約123.1人
端数を切り上げると、黒字ラインは1日124人です。現在は1日約111人なので、モデル上は1日13人の不足です。
ここまで出すと、「月商を40万円増やす」という抽象的な目標を、「1日13人を、どの時間帯・商品・予約経路で増やすか」という現場の課題へ変えられます。
なお、このモデルは計算説明用で、私の支援実績や実在店舗の数値ではありません。税金、借入元金返済、設備投資、売掛金・買掛金の増減などは含めていないため、資金繰り判断には8週間の資金繰り表も併用してください。
不足額を埋める3つの方向
| 方向 | モデル上の変化 | 注意点 |
|---|---|---|
| 客数を増やす | 1日13人増なら月42万2,500円の売上増 | 追加人員、食材ロス、席数、ピーク負荷を確認 |
| 変動費率を下げる | 35%から30%なら月18万円改善 | 同じ月商360万円では赤字8万円が残る |
| 固定費を下げる | 月26万円下げれば月商360万円で損益0 | 人員・営業時間を削り、売上まで落とさない |
客数を1日13人増やす計算は、13人 × 1,250円 × 26日 = 月42万2,500円です。限界利益率65%なら、増える限界利益は約27万4,625円となり、モデル上の赤字26万円を上回ります。
一方、変動費率を5ポイント下げても改善額は18万円で、赤字8万円が残ります。固定費を26万円削れば計算上は損益0ですが、人員や営業時間を削って売上が落ちれば再計算が必要です。
3つを同時に変えると原因と効果が分からなくなります。私はまず、実行可能性が高く、限界利益への影響を週次で測れるものを1つ選ぶことを勧めます。赤字が続く店では、先に13週間の改善・継続・撤退判断で資金余力と期限も確認してください。
自分で計算できる範囲と、相談を急ぎたい状態
自分で進めやすい状態
- 直近3カ月の売上と費用が月別にそろっている
- 変動費と固定費をおおむね分けられる
- 営業日数、客単価、1日客数を把握できる
- 税・社会保険料・家賃・仕入代金・返済に遅れがない
- 改善施策を1つ選び、週次で検証できる
早めに専門家へ相談したい状態
- 損益分岐点を計算しても、資金がいつまで持つか分からない
- 変動費と固定費の区分で結果が大きく変わる
- 売上を黒字ラインまで増やす席数・営業時間がない
- 税・社会保険料・家賃・仕入代金・返済に遅れがある
- 追加借入だけを前提に営業継続を考えている
返済条件、税務、法務、債務整理が関係する場合は、取引金融機関、税理士、弁護士、中小企業活性化協議会など、該当分野の専門家へ相談してください。飲食店コンサルへ依頼する範囲と費用を比べたい場合は、先に飲食店コンサルの費用を判断する4基準も確認できます。
今日の損益分岐点チェックリスト
- 直近3カ月の月商と費用をそろえた
- 売上に連動する変動費を分けた
- 変動費率と限界利益率を計算した
- 固定費を限界利益率で割った
- 損益分岐点売上高を営業日数で割った
- 1日売上を客単価で割り、必要客数を出した
- 客数・変動費率・固定費のうち、最初に変える1項目を決めた
- 毎週、売上ではなく限界利益まで確認する日を決めた
まとめ
飲食店の損益分岐点は、固定費を限界利益率で割ると計算できます。月商だけで終わらせず、1日売上と1日客数まで分解すると、現場で変えるべき数字が見えます。
今回のモデルでは、月商360万円、変動費率35%、固定費260万円、月26日営業、客単価1,250円の場合、黒字ラインは月商400万円、1日約15万3,846円、1日124人でした。自店の数字へ置き換え、最初の1項目を決めてください。
自店の黒字ラインをLINEで整理します
対象:赤字が続き、損益分岐点を1日売上・必要客数まで落としたい小規模飲食店オーナー
相談で整理できること:変動費と固定費の分け方、月商と1日客数の黒字ライン、最初に検証する1項目
準備する情報:直近3カ月の月商、食材費・販売手数料、固定費、営業日数、客単価。口座番号や個人情報は送らず、まず合計額だけで構いません。
相談後の流れ:現状を整理し、自分で進める範囲と、税務・金融・法務など別の専門家へ確認すべき範囲を分けます。相談だけで契約が決まることはありません。

