赤字が続き、「改善を続けるべきか、廃業も含めて判断すべきか」と迷っている小規模飲食店オーナーへ。
この記事では、感覚ではなく限界利益、損益分岐点までの不足額、月間の現金減少額、資金余力の残り週数という4つの数字を使い、13週間で改善・継続・撤退の判断材料をそろえる方法を解説します。13週間は公的な基準ではなく、自店で期限を決めて検証するための計画例です。
私は飲食業界に20年携わり、元統括料理長として40拠点のマネジメントを経験しました。現場では、売上だけを見て判断すると、利益と現金の減り方を見落とします。続けるにしても方向を変えるにしても、まず数字を同じ表に並べることが必要です。
飲食店の廃業判断は、赤字額だけで決めない
日本政策金融公庫の「生活衛生関係営業の景気動向等調査結果(2026年4〜6月期)」では、飲食業1,439社の業況判断DIはマイナス20.4、売上DIはマイナス13.6、採算DIはマイナス11.3、利用客数DIはマイナス21.2でした。業況判断DIは前期対比の「好転」割合から「悪化」割合を、売上・利用客数DIは前年同期対比の「増加」割合から「減少」割合を、採算DIは「黒字」割合から「赤字」割合を引いた値です。減少率や赤字率そのものではなく、個々の店の結果を示すものでもありません。
東京商工リサーチによると、2026年7月の飲食業の法的倒産は112件で、同社が集計を開始した1997年以降の7月として最多でした。ただし、これは負債1,000万円以上の法的倒産を集計した数字です。自主廃業を含むすべての閉店件数ではなく、数字が多いから自店も閉めるべきだという意味ではありません。
大切なのは、ニュースを見て不安になることではなく、自店の改善余地と資金の残り時間を測ることです。
廃業を決める前に確認する4つの数字
1.限界利益
限界利益は、売上から売上に連動して増減する費用を引いた金額です。飲食店では、まず食材費、決済手数料、販売手数料などを変動費として整理します。
限界利益 = 売上高 − 変動費
家賃や固定給などを支払う原資が、売上からどれだけ残っているかを確認します。費用区分は店によって異なるため、会計処理と実態がずれている場合は税理士などに確認してください。
2.損益分岐点までの不足額
限界利益率が分かれば、固定費を回収するために必要な売上を計算できます。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
現在の売上との差を出すと、「あと何円売れば黒字になるか」が見えます。ただし、単に売上を増やすだけでなく、原価率や販売手数料が変わる施策は限界利益率も計算し直します。
3.月間の現金減少額
損益と資金繰りは同じではありません。借入元金の返済、設備代金、税・社会保険料の支払いなど、損益計算書の赤字額だけでは把握できない現金支出があります。
月間の現金減少額 = 月初現金 − 月末現金
単月の入出金に偏りがある場合は、直近3カ月程度を並べ、臨時支出を分けて見ます。
4.資金余力の残り週数
改善策に使える時間は、手元資金と現金減少額で決まります。
資金余力(月) = 手元現金 ÷ 月間の現金減少額
月数を週へ換算すると、改善策を何週間検証できるかが具体的になります。未確定の融資、補助金、資産売却代金は、入金が確定するまで予定資金に含めません。
モデル計算:売上を40万円増やしても赤字が残る場合
次は説明用のモデルであり、私の支援実績や実在店舗の数字ではありません。
| 項目 | モデル値 |
|---|---|
| 月商 | 400万円 |
| 変動費率 | 35% |
| 毎月現金支出が発生する営業固定費 | 300万円 |
| 借入元金返済 | 月20万円 |
| 手元現金 | 180万円 |
このモデルでは計算を単純化するため、固定費300万円を毎月現金支出が発生する営業固定費と仮定します。減価償却費、税金、設備投資、売掛金・買掛金の増減などは考慮していません。以下は正式な会計上の営業利益ではなく、経営判断用の簡易収支です。
- 限界利益:400万円 × 65% = 260万円
- 簡易営業収支:260万円 − 300万円 = マイナス40万円
- 損益分岐点売上高:300万円 ÷ 65% = 約461.5万円
- 損益分岐点までの月商不足額:約61.5万円
- 元金返済を含む月間の現金減少額:40万円 + 20万円 = 60万円
- 資金余力:180万円 ÷ 60万円 = 3カ月、約13週間
仮に月商を40万円増やして440万円にできても、限界利益は286万円です。固定費300万円に対して簡易営業収支はまだマイナス14万円で、元金返済を含む現金減少額は月34万円残ります。
現在と同じ現金減少ペースが続くと仮定した単純計算では、手元現金180万円は約13週間分に相当します。実際の資金切れ日は、税金、賞与、仕入支払日などで前後します。
この場合、「売上40万円増」を成功と扱って終わるのではなく、黒字化まで残る14万円と、現金減少が続く事実を見て次の判断をします。
13週間で改善・継続・撤退の判断材料をそろえる
| 期間 | 実行すること | 判断材料 |
|---|---|---|
| 1〜2週目 | 売上、変動費、固定費、返済、現金残高を確定 | 4つの数字が計算できる |
| 3〜6週目 | 改善変数を1つに絞って実行 | 売上だけでなく限界利益が増えたか |
| 7〜11週目 | 再現性と現場負荷を確認 | 利益改善が継続できるか |
| 12〜13週目 | 継続、縮小、業態変更、撤退準備を比較 | 資金が尽きる前に次の手を選べるか |
改善変数は、客数、客単価、メニュー構成、人員配置、営業時間などから1つだけ選びます。複数を同時に変えると、どの施策が限界利益を改善したか分からなくなるためです。
直近の数字を整理するには、先に公開した飲食店の資金繰り表の作り方と営業利益率を3数字で診断する手順も使えます。
自分で進められる範囲と、早く相談すべき状態
自分で13週間の検証を進めやすい状態
- 売上・原価・固定費・現金残高を月次で把握できている
- 13週間の検証期間より資金余力が長い
- 改善する変数を1つに絞れる
- 税・社会保険料・家賃・返済の遅れがない
期限を待たず専門家へ相談したい状態
- 資金余力が13週間を下回る、または計算できない
- 税・社会保険料・家賃・仕入代金・返済の支払いが遅れている
- 個人保証、リース、解約予告、原状回復などの契約条件が整理できていない
- 追加借入を前提にしなければ営業を続けられない
- 改善策を実行しても月間の現金減少が止まらない
中小企業庁は2026年3月、早期経営改善計画策定支援などの手引きを改定し、相談の早期化、支援メニューの適切な選択、出口の明確化を重視しています。返済猶予や債務整理、法的な判断が関係する場合は、取引金融機関、税理士、弁護士、中小企業活性化協議会など、該当分野の専門家へ早めに相談してください。
今日確認するチェックリスト
- 直近3カ月の売上と変動費を並べた
- 固定費を毎月発生するものと臨時支出に分けた
- 借入元金返済を含む現金減少額を出した
- 損益分岐点までの売上不足額を計算した
- 手元現金が何週間持つかを確認した
- 13週間で検証する改善変数を1つ決めた
- 12週目に比較する選択肢を先に書いた
まとめ
飲食店の赤字改善は、「もう少し頑張る」という気持ちだけで期限を延ばさないことが重要です。限界利益、損益分岐点までの不足額、月間の現金減少額、資金余力の残り週数を並べると、改善に使える時間と不足額が見えます。
継続か撤退かを今日決める必要はありません。ただし、判断する日と検証する数字は今日決められます。
赤字改善の優先順位をLINEで整理します
対象:赤字が続き、改善・縮小・撤退準備のどこから手を付けるか迷っている小規模飲食店オーナー
相談で整理できること:4つの数字、最初に変える1項目、13週間で確認する基準
準備する情報:直近3カ月の月商・原価・固定費、現在の現金残高、月々の返済額。個人情報や口座番号は送らず、まず合計額だけで構いません。
相談後の流れ:現状を整理し、自分で進める範囲と、必要に応じて金融・税務・法務の専門家へ確認すべき範囲を分けます。相談だけで契約が決まることはありません。

