
土曜19時、3回転目に入った瞬間、豆皿の追加オーダーが束になってキッチンへ飛び込み、盛り付け担当の手が止まる。SNSで話題になった新メニューほど、こういう形で現場を追い詰める。この記事を読み終えれば、話題のメニューを「バズって終わり」にせず、客単価を底上げする定番メニューに変えるための判断基準と手順が分かる。
話題のメニューが数字に残らない理由
2026年は豆皿・おばんざい定食や中華アフタヌーンティーのような、見た目と体験性を重視したメニューが話題になりやすいと言われています。SNSでの反応も取りやすい一方、月末にPOSレジを締めながら新メニューの単品原価をようやく電卓で叩き直す、という店が少なくありません。話題になった時点で満足してしまい、原価・手数量・オペレーションへの負荷を後から確認する順番になっているためです。
結果として起きるのが、注文は増えたのに厨房が回らず提供時間が伸びる、原価率が想定より高く粗利が薄い、という状態です。客単価4,000円・席数20の想定モデルで試算すると、原価率が想定の30%を5ポイント超えるだけで、月商150万円の店なら粗利が7万円以上目減りします。
客単価に効くメニューの条件は3つ
話題性のあるメニューを定番化する前に、次の3つを満たしているか確認します。
- 単品で完結せず、サイド・ドリンクとのセット提案がしやすいこと
- 仕込みが既存メニューの工程と共有でき、新規の仕込み時間が1品あたり5分以内であること
- 原価率が既存の看板メニューと同水準(目安30%前後)に収まること
この3条件を満たさないメニューは、話題づくりの単発企画として割り切り、定番化の検討対象からは外します。すべてを定番にしようとすると、キッチンの負荷だけが増えていきます。
原価と手数量を先に決めてから試作する
多くの店は試作してから原価計算をしますが、順番を逆にすると判断が早くなります。想定売価と目標原価率(30%目安)から先に「使える食材原価の上限」を出し、その範囲で試作するやり方です。例えば売価1,200円・原価率30%なら、食材原価の上限は360円です。この上限内で豆皿を3品構成にするか2品構成にするかを決めれば、試作段階で赤字メニューを作らずに済みます。
手数量についても同様です。1皿あたりの盛り付け工程が3工程を超えると、2回転目以降のピーク帯で提供時間が伸びやすくなります。土曜19時の3回転目でキッチンが止まった店の多くは、この盛り付け工程数を試作段階で数えていませんでした。
定番化までの7つの手順
- 目標原価率から食材原価の上限を先に決める
- 盛り付け工程を3工程以内に設計する
- 既存の仕込み工程と共有できるか確認する
- ピーク帯(金曜・土曜の2〜3回転目)を想定して試作する
- 2週間限定で提供し、注文数と提供時間を記録する
- セット率・リピート率を数字で確認する
- 数字が条件を満たしたメニューだけを正式メニュー化する
この7手順を踏んだ店では、話題性のある新メニューの導入後1ヶ月で、客単価が数百円単位で上がるケースが出てきます。もちろん立地・客層によって差はあるため、必ず同じ結果になるとは言えません。
実際にどのくらいの原価率・回転率で、客単価がどう動いたのか。豆皿定食を軸にした個人店の実数値シミュレーションと、赤字を出さないための原価計算テンプレートは、有料note版で詳しく解説しています。数字を自店に当てはめて試算したい方は、そちらもあわせてご覧ください。
まとめ
- 話題のメニューは原価・工程・回転率の3条件を確認してから定番化を判断する
- 売価と目標原価率から食材原価の上限を先に決め、その範囲で試作する
- 2週間の限定提供でデータを取ってから正式メニュー化する
新メニューの原価計算や利益構造の見直しについては、経営コンサルティングのページでも個別に相談を受け付けています。
C’est parti&Hでは、飲食店の経営者・開業予定のシェフに向けて、メニュー開発から原価管理、集客まで一体で伴走するコンサルティングを行っています。トレンドを取り入れるかどうかの判断に迷ったときは、一人で抱え込まずご相談ください。
今日の営業後、まずレジ締めのタイミングで直近2週間の新メニュー(もしあれば)の注文数を数え、売価から原価率を電卓で1回計算してみてください。それだけで、定番化すべきかどうかの最初の判断材料が手に入ります。

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