モバイルオーダーを導入したのに、なぜか厨房がぎすぎすして、出数が落ちて、クレームまで増えた。そんな相談を受けることがある。この記事を読み終える頃には、モバイルオーダーを入れる前に厨房側で何を決めておくべきかが分かるはずだ。
ぐるなびの調査では、モバイルオーダーを利用したことがある客は62.1%にのぼり、そのうち67.1%が満足したと答えている。導入するかどうかで悩む段階は、もう終わっていると言っていい。問題は、導入した後の厨房で起きる。
「便利になったはず」なのに現場が荒れる理由
金曜19時、2回転目に差しかかった時間を思い浮かべてほしい。ホールのタブレットには追加注文の通知が次々と入るが、厨房のスタッフは変わらず2人のままだ。伝票の紙が減った分だけ口頭でのすり合わせも減り、気づけば同じ料理を二重に作っていたり、逆に1品が抜け落ちていたりする。ホール業務は確かに軽くなったのに、その分の負荷がそのまま厨房に流れ込んだだけ、という状態だ。
客単価が上がるという触れ込みは間違いではない。モバイルオーダーは注文のハードルを下げる分、単純に注文点数が増えやすい仕組みだからだ。ただしそれは、増えた注文をさばける厨房体制が前提になっている話であって、端末を入れれば自動的に起きる変化ではない。導入前に見るべきは端末の機能一覧ではなく、あなたの店のピークタイムに厨房が今何品まで同時進行できているかという数字の方だ。
通信障害は「起きるもの」として設計する
店内のWi-Fiが不安定になり、注文が一時的に止まるというトラブルも珍しくない。ある店では23時のレジ締め直前にWi-Fiが切断し、会計を待つ客がレジ前に列を作った。紙のメニューとオーダー用紙を1セット、レジ裏に常備しておくだけで、この種の混乱はほぼ防げる。特別なシステムを組む必要はなく、紙1枚の備えがあるかどうかの差でしかない。
導入前に確認しておきたい5つの判断基準
- ピークタイムに厨房が同時進行できる品数の上限
- 追加注文が入った時の伝達ルール(口頭かモニターか)
- 通信障害時の代替オペレーション(紙メニューの常備)
- スマートフォンの操作が苦手な客への案内方法
- IT導入補助金・省力化投資補助金など対象条件の確認
この5つは、業態や規模が違っても大半の店に当てはまる一般論だ。実際に判断が分かれるのは、自分の店の席数や客単価、ピーク時の人員でシミュレーションしたときに、導入後の粗利がどう動くかという部分になる。実際の数字を使ったシミュレーションと、厨房体制を変えずに乗り切った店の事例は、有料note版で詳しく解説している。
補助金は、あくまで初期費用の負担を軽くする制度であって、厨房の体制まで整えてくれるわけではない。端末導入費が安く済んだとしても、厨房が回らなければ、結局は人を増やすか、料理の提供を諦めるかの二択に追い込まれる。数字で見るべきは端末代ではなく、ピーク帯にさばける品数と、そこに人件費をどう配分するかだ。
まとめ
- ホール効率化と厨房体制強化は必ずセットで設計する
- 導入判断は端末機能でなく「ピーク時の同時進行品数」で見る
- 紙のメニュー1セットが通信障害時の最後の砦になる
こうした経営判断の設計は、飲食店の原価・利益管理やDX導入のご相談でも日々扱っているテーマだ。アッシェ企画では、原価管理・メニュー開発からDX導入まで、飲食店経営の数字を一緒に整理するコンサルティングを行っている。モバイルオーダーの導入で迷ったら、現状の厨房体制と合わせて相談してほしい。
今日の営業が終わったら、まずはピークタイムに厨房が今何品まで同時進行できているか、スタッフに直接聞いてみてほしい。その数字がないまま端末選びを始めると、便利になったはずの仕組みが、現場をかえって疲弊させてしまう。
個別のご相談は料金プランをご覧ください。


コメント