デリバリーの注文は増えたのに、月末に利益が残らない。そんな小規模飲食店のオーナーに向けて、この記事では手数料・食材・包材・店舗負担の販促費・追加人件費を引き、続ける商品と見直す商品を判断する方法を整理します。
C'est parti&Hの若山弘貴です。私は飲食業界20年、元統括料理長として40拠点のマネジメントに携わってきました。私が最初に確認したいのは、デリバリーの売上合計ではなく「1注文増えたときに、いくら残るか」です。
デリバリーの採算は「入金額=利益」で判断しない
サービスからの振込額には、まだ食材費や容器代、人件費が反映されていないことがあります。反対に、手数料や値引きがすでに控除された入金額から同じ費用をもう一度引くと、赤字を大きく見積もってしまいます。
まずは対象期間をそろえ、注文の売上から計算するか、精算後の入金額から計算するかを決めます。私は明細と照合しやすい、売上からの計算を勧めます。入金の翌月調整や返金も、元の注文に対応させてください。
手数料は一律の割合を当てはめず、明細で確認する
出前館の公式料金ページでは、配達代行のサービス手数料と配達代行手数料は税抜の商品代金、決済手数料は税込の注文金額を基準に案内されています。異なる計算基準の率を、単純に足して売上へ掛けないことが大切です。自店の契約と精算明細を優先してください。
Uber Eatsの店頭価格オファーキャンペーンFAQには、通常の手数料に加えたオファー利用手数料や、翌月の払い戻しを含む計算例があります。これは当該キャンペーンの説明であり、全店舗・全注文に共通する条件ではありません。
参照:出前館「出店費用」/Uber Eats「店頭価格オファーキャンペーンFAQ」(ともに2026年9月20日確認)。
1注文に残る金額を5項目で計算する
ここでは、注文売上から次の5項目を差し引いた額を「注文貢献額」と呼びます。店舗全体の営業利益とは異なり、家賃や既存人員の固定的な人件費などを賄う前の金額です。
- サービス関連費用:販売・配達・決済・オファー利用など、注文に対応する費用。
- 食材費:盛り付け量と歩留まりを反映した、実際に使う食材の原価。
- 包材費:容器、ふた、袋、箸、カトラリーなど。
- 店舗負担の販促・調整額:店舗負担の値引き、注文に対応する広告費、返金等。売上に反映済みの値引きは二重控除しません。
- 追加人件費等:受注によって実際に増える残業や追加シフト等。既存の固定人件費とは分けます。
注文貢献額=注文売上-①-②-③-④-⑤
売上・費用は同じ税処理の基準にそろえます。以下は税抜で比較できるよう整理した架空のモデルです。実在店舗の実績や、特定サービスの料金表ではありません。税の処理が不明な場合は顧問税理士等へ確認してください。
モデル例:売上1,500円でも、残る額は130円
| 項目 | 1注文当たり |
|---|---|
| 注文売上 | 1,500円 |
| ①サービス関連費用 | 525円 |
| ②食材費 | 450円 |
| ③包材費 | 95円 |
| ④店舗負担の販促・調整額 | 150円 |
| ⑤追加人件費等 | 150円 |
| 注文貢献額 | 130円 |
1,500-525-450-95-150-150=130円です。この注文が月200件なら、売上30万円に対して注文貢献額は2万6,000円。ここからデリバリー専用の月額費用や、店舗共通の固定費を考えます。
同じ例で店舗負担の販促・調整額がさらに200円増えれば、1注文はマイナス70円、月200件ではマイナス1万4,000円になります。注文数を増やす前に、この構造を止める必要があります。広告費を注文へ配賦した場合は、月次計算で再度引かないようにします。
継続・見直し・停止検討を分ける3つの判断
注文貢献額がマイナス:まず原因の商品・条件を分ける
通常注文とクーポン注文を分け、値引き、包材、商品構成のどこでマイナスになるか確認します。価格調整や対象商品の変更は契約・キャンペーン条件を確認したうえで検討します。赤字でも集客目的で続けるなら、予算上限と終了日を決め、再注文等の成果が確認できなければ見直します。
プラスでも少額:固定費と作業時間を見る
専用端末等の月額費用を、月間の注文貢献額で賄えているか確認します。追加人件費が発生しなくても、混雑時間の厨房能力は有限です。1注文に必要な作業時間を測り、店内注文の遅れや取り逃しも合わせて評価します。
プラスで現場にも余力:小さく継続して再測定する
品質を保って提供できる商品に絞り、同じ曜日・時間帯で比較します。変更するのは価格、セット内容、販促条件などのうち原則1項目です。改善額だけでなく注文数と月間の残額も確認し、1注文の利益が増えたから成功とは決めません。
今日から始める採算チェックリスト
- 直近7日分の注文・精算明細を用意し、通常注文と販促注文を分けた。
- 売れ筋3商品の食材と包材の原価を、実際の使用量で確認した。
- 手数料、店舗負担の値引き、後日調整を重複なく整理した。
- 追加シフト・残業と、既存の固定人件費を分けた。
- 注文貢献額、月間見込み、作業時間を並べ、最初に変える1項目を決めた。
- 変更日と再確認日を記録し、翌週に同じ基準で比較する。
食材の使用量が不安定なら、先にポーション管理の手順で原価の前提をそろえます。複数商品の優先順位は売上順位と粗利額を分けるABC分析も参考にしてください。
自分で判断できる範囲と、相談を使う目安
明細と原価がそろい、商品ごとのプラス・マイナスが分かれば、まずは自店で1項目を試せます。一方、複数サービスの明細が合わない、店内営業との優先順位を決められない、値上げ・商品変更・営業時間のどこから直すか迷う場合は、数字と現場を一緒に整理する支援が役立ちます。
相談対象:デリバリー売上はあるのに利益が残らず、商品別採算を見直したい小規模飲食店のオーナー。
相談で整理すること:採算を確認するために不足している情報と、最初に検証する課題。詳細な原価表作成や実行支援が必要な場合は、別途支援範囲を相談します。
準備する情報:サービス名、直近の売上・注文数、手数料等の精算明細、主力商品の販売価格・食材費・容器代、困っている時間帯。分かる範囲で構いません。明細を共有する際は、お客様の氏名・住所などを隠してください。
相談後の流れ:現状と必要資料を確認し、必要な場合だけ単発診断や改善支援の範囲・見積もりをご案内します。無料相談後の契約は必須ではありません。
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まとめ:注文を増やす前に、残る金額を確認する
デリバリーの継続判断は、売上だけではできません。私は、まず売れ筋3商品について5項目を引き、注文貢献額と厨房の余力を並べることを勧めます。今日の精算明細を開き、通常注文と販促注文を分けるところから始めてみてください。

