宴会の予約は入るのに、追加スタッフや飲み放題の仕入れを払うと利益が残らない。そんな小規模飲食店のオーナーに向けて、今回はコース価格・追加費用・最低人数を一緒に決める手順を整理します。予約を受ける前に、今の条件で何が残るかを確認できます。
C'est parti&Hの若山弘貴です。私は飲食業界20年、元統括料理長として40拠点のマネジメントに携わってきました。この記事では実在店の成功談ではなく、条件を明示したモデル計算で判断方法をお伝えします。
宴会コースは「料理原価率」だけで決めない
料理の原価が低くても、飲料、予約手数料、追加人件費、準備と片付けに費用がかかれば、手元に残る額は小さくなります。私は、まず「1人増えたときに残る額」と「その宴会を受けるためだけに増える費用」を分けて考えます。
ホットペッパーグルメ外食総研の2025年12月公表調査では、2025年12月〜2026年1月の忘・新年会の想定予算は1回平均5,004円でした。これは首都圏・関西圏・東海圏の消費者調査による過去の予算感で、2026年末の予測でも、自店が採算を取れる価格でもありません。相場に合わせる前に、自店の費用を積み上げます。
出典:ホットペッパーグルメ外食総研「2025年12月〜2026年1月の忘年会・新年会の動向」
手順1|1人当たりの変動費を出す
1人当たり限界利益=1人当たり売価−1人当たり変動費です。限界利益は、家賃などの固定費と利益を賄うために残る額で、最終利益とは違います。J-Net21も、売上高から変動費を引いた額として説明しています。
以下はすべて税抜でそろえた架空の計算例です。業界平均や支援実績ではありません。顧客への表示価格と、店内の採算計算の税区分を混ぜないようにしてください。
| 1人当たりの項目 | モデル金額 |
|---|---|
| コース売価 | 5,000円 |
| 料理原価 | 1,600円 |
| 飲み放題の飲料原価 | 700円 |
| 人数に応じる消耗品・決済等の費用 | 200円 |
| 変動費合計 | 2,500円 |
| 限界利益 | 2,500円 |
飲料原価は「1杯の原価×平均杯数」で仮置きし、実施後の出庫量と残量で更新します。予約サイトや決済の手数料は自店の契約と課金条件を確認し、人数比例分と1件ごとの費用に分けます。飲まないお客様も含む全参加者で平均するなど、計算の分母も統一します。
出典:中小機構 J-Net21「損益分岐点の計算方法と経営改善に向けた活用方法」
手順2|宴会の追加費用を回収する人数を求める
この宴会のための増員・延長勤務に12,000円、設営などに8,000円かかるとします。追加費用は計20,000円です。通常のシフトで既に計上した人件費を、追加費用として二重に数えないようにします。
追加費用の回収人数=20,000円÷2,500円=8人。ただし8人では、宴会の追加費用を回収しただけです。店舗全体の家賃や通常人件費を回収し、利益を出せたことにはなりません。
店に残したい額を加えて最低人数を決める
追加費用を払った後、固定費回収と利益のために30,000円を残したいなら、(20,000円+30,000円)÷2,500円=20人が必要です。端数が出る場合は切り上げます。この30,000円は説明用の目標であり、自店では月間の必要利益と営業日ごとの計画から決めます。
15人では2,500円×15人−20,000円=17,500円。目標との差は12,500円です。同じ条件を月4回受ければ目標との差は50,000円になります。これを「確定した赤字」と呼ぶのではなく、目標に対する不足として把握します。
手順3|貸切なら通常営業で残る額と比べる
貸切で通常のお客様を断るなら、宴会を受けない場合との比較が必要です。同じ曜日・同じ時間帯の通常営業で、売上から回避できる費用を引いて40,000円残る見込みなら、宴会で30,000円残っても通常営業より10,000円少なくなります。
この例では、通常営業と同じ40,000円を残すために、(20,000円+40,000円)÷2,500円=24人が必要です。これは同じ時間帯の比較です。通常営業側にも追加スタッフ等が必要なら、その費用を差し引いて比較します。売上高同士では判断しません。
一方、予約が少ない曜日なら比較結果は変わります。「貸切は一律20人から」と固定せず、曜日・時間・提供内容ごとに計算してください。店舗全体の必要売上は、飲食店の損益分岐点の計算手順で別に確認できます。
手順4|人数が足りないときは価格・内容・受注条件を調整する
15人でも30,000円を残すには
変動費を1人2,500円のままと仮定すると、必要売価は2,500円+(20,000円+30,000円)÷15人=約5,833.34円です。100円単位で切り上げて税抜5,900円にする案なら、(5,900円−2,500円)×15人−20,000円=31,000円が残ります。
ただし売価連動の手数料が増える場合は、変動費も再計算が必要です。値上げだけでなく、料理の品数・提供方法、飲み放題の対象や時間、追加スタッフの配置を比較します。内容変更は予約前に説明し、お客様が選べる状態にします。
最低保証売上は「人数×単価」だけで決めない
最低保証売上を設ける場合も、実人数ごとの変動費と追加費用から逆算します。金額だけを設定して人数上限を決めないと、飲料や料理の費用が増えて採算が崩れます。人数変更の締切、料金対象人数、提供時間、内容、キャンセル時の扱いを予約前に明確にしてください。キャンセル料の適法性はこの記事では判断せず、必要に応じて専門家へ確認します。
今日、予約を受ける前に確認するチェックリスト
- コース売価と費用の税込・税抜を統一した
- 料理・飲料・手数料を含む1人当たり変動費を出した
- 準備・接客・片付けで追加される人件費を数えた
- 追加費用の回収人数と、目標額を残す人数を分けた
- 貸切では同じ時間帯の通常営業と比較した
- 人数減少・飲料原価上振れの条件でも再計算した
- 受注条件を予約前に伝え、実施後に見積もりと実績を比べる担当を決めた
原価が分からない場合は、まず1コース分のレシピと飲料の出庫を記録すれば、自店で検証を始められます。盛り付けのばらつきが大きいときは、ポーション管理の5手順も併せて確認してください。
まとめ|宴会の条件を数字で整理してから受注する
見る順番は、1人当たり限界利益、宴会の追加費用、店に残す目標額、通常営業との比較です。料理原価率だけでは見えない不足を、予約前の条件に反映します。
自分で原価を集計し、1コースの条件を試すところまでは店内で進められます。複数コースや曜日で判断が変わる、増員と提供工程が絡む、通常営業との比較ができない場合は、外部の支援で優先順位を整理する選択肢があります。
宴会の売上はあるのに利益が残らないオーナーへ
C'est parti&Hの無料相談では、コースの採算でどこが分からないか、確認すべき資料と改善の優先順位を整理します。現在のコース表、料理・飲料の原価、予定人数、準備から片付けまでのシフトを、分かる範囲でご用意ください。
LINEでは「宴会コースの採算を相談したい」と、業態・コース価格・想定人数をお送りください。課題と必要資料を確認し、支援が必要な場合は範囲と見積もりを相談します。無料相談後の契約は必須ではありません。詳細な原価設計や実行支援まで無料で完了することをお約束するものではありません。

