売上はあるのに原価率が合わず、廃棄や盛り付けのズレが利益を削っている小規模飲食店のオーナー向けに、週1回の棚卸しで原因を絞る方法をまとめます。この記事を読むと、帳簿上の在庫と実在庫の差を金額にし、発注・廃棄・ポーション・記録漏れのどこから直すか判断できます。
結論から言うと、月末棚卸しだけでは原因を思い出せないことがあります。まず原価差異が大きい上位10食材に絞り、同じ曜日・同じ時間に7日間隔で数えると、現場で起きたズレと結び付けやすくなります。
棚卸し差異とは、帳簿在庫と実在庫の差です
日本政策金融公庫の勘定科目説明では、売上原価は期首棚卸高と当期仕入高を足し、期末棚卸高などを差し引いて計算します。飲食店でも、期末在庫を正しく数えられなければ、実際原価の判断がずれます。
帳簿在庫=前回実在庫+期間中の仕入-理論使用額
棚卸し差異=帳簿在庫-今回実在庫
差がプラスなら、記録より実物が少ない状態です。ただし、すぐ盗難や廃棄と決めつけてはいけません。納品書の入力漏れ、単位換算、レシピ量、まかない、試作、返品などでも差は出ます。
最初は上位10食材だけを週1回数える
全食材を毎日数えると、作業が続かなくなります。前回の記事で確認した理論原価と実際原価の差が大きい食材、または月間仕入額が大きい上位10品を対象にしてください。
数える曜日と時刻を固定し、営業前または閉店後に行います。未開封は袋・本・缶などの単位、開封済みは重量または容量で数えます。「半分くらい」ではなく、誰が数えても同じ単位になるよう棚卸し表へ書きます。
計算例:1週間で4万5,000円の差が出た場合
以下は判断手順を示す仮定の例で、特定店舗の実績ではありません。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 前回実在庫 | 30万円 |
| 1週間の仕入 | 60万円 |
| 理論使用額 | 52万円 |
| 帳簿在庫 | 38万円 |
| 今回実在庫 | 33万5,000円 |
| 棚卸し差異 | 4万5,000円 |
帳簿在庫38万円に対して差異4万5,000円なので、差異率は約11.8%です。これは4万5,000円の利益改善が必ずできるという意味ではありません。原因が説明できる金額と、説明できない残額に分けるための出発点です。
差異を5つの原因に分ける
1.廃棄・期限切れ
「食材名・量・原価・理由」をその場で記録します。農林水産省が2026年6月30日に公表した2024年度推計では、食品ロスは461万トン、事業系は237万トン、外食産業は70万トンでした。これは自店の損失額ではありませんが、外食のロスを量で把握する必要性を示す背景になります。
2.盛り付け・レシピ量のズレ
主力商品を担当者別に3皿ずつ量り、レシピの基準量との差を確認します。私は飲食業界20年、元統括料理長として40拠点の運営に関わってきましたが、同じレードルやトングを使っていても、基準重量を共有しないと差は残ります。個人を責めず、道具と手順をそろえることが先です。
3.まかない・試作・サービス
営業売上にならない使用も在庫から減ります。まかない、試作、作り直し、サービス提供は、用途と数量を記録してください。禁止するためではなく、理論使用額へ反映するためです。
4.発注・納品・単位のズレ
ケースと個、kgとg、税抜と税込が混在していないか確認します。仕入規格や歩留まりを比べる場合は、仕入先・規格を見直す5項目も参照してください。
5.入力漏れ・所在不明
上の4原因で説明できない残額だけを「所在不明」とします。POSや在庫システムがあっても実在庫とのズレは起きるため、定期的な現物確認が必要です。中小企業基盤整備機構の解説でも、POS上の理論在庫と実在庫は紛失や廃棄などで食い違うため、定期的な棚卸しが必要とされています。
7日間で行う改善テスト
- 差異額が大きい食材を1品選ぶ
- 原因を廃棄・盛り付け・未記録使用・発注単位・所在不明に分ける
- 廃棄記録、計量盛り付け、発注点のいずれか1つだけを変える
- 同じ曜日・同じ時刻に再び棚卸しする
- 差異額と現場負担を前週と比べる
農林水産省の飲食店向け好事例集でも、仕入時・保管時の工夫に加え、食品や廃棄物の量を把握する取組が整理されています。対策を同時に増やすより、1品・1原因・1週間で変化を見る方が、何が効いたか判断しやすくなります。
今日から使う棚卸しチェックリスト
- 対象を月間仕入額または原価差異が大きい10品に絞った
- 数える曜日、時刻、単位、担当者を決めた
- 未開封と開封済みの数え方を統一した
- 帳簿在庫と実在庫の差を金額にした
- 廃棄、盛り付け、未記録使用、発注単位、所在不明に分けた
- 改善する食材と原因を1つだけ選んだ
- 7日後に同じ条件で再計測する予定を入れた
自分でできる範囲と、相談した方がよい基準
1店舗で上位10品の仕入、レシピ、実在庫をそろえられるなら、まずは自店で試せます。一方、複数店舗で単位やレシピが違う、差異の原因を2週間追っても説明できない、棚卸し作業が重く続かない、発注量と仕込み量まで同時に設計し直す必要がある場合は、第三者と整理すると進めやすくなります。
まとめ:月末に率を見るだけでなく、週1回で原因を追う
棚卸しは決算用の作業だけではありません。上位10品を週1回数え、帳簿在庫と実在庫の差を金額化し、5つの原因へ分ければ、どこから改善するか決められます。まずは差異が大きい1品を7日間だけ追ってください。
LINE無料相談の対象:原価率が合わず、廃棄・盛り付け・発注・在庫のどこに原因があるか絞れない飲食店オーナーです。相談では、対象10品、棚卸し差異、廃棄記録、レシピと発注単位を整理します。直近2回の棚卸し表、1か月分の納品書、対象商品のレシピ、POS販売数をご準備ください。内容を確認後、自店で直せる範囲と必要な支援を分けてご案内します。
出典
- 日本政策金融公庫「勘定科目の説明」
- J-Net21「第4回 材料費の計算方法」
- 農林水産省「事業系食品ロス量(2024年度推計値)を公表」(2026年6月30日)
- 農林水産省「飲食店等の食品ロス削減のための好事例集」(2019年10月更新)

