仕入価格が上がり、メニューを値上げするしかないと感じている小規模飲食店のオーナー向けに、今回は仕入先と食材規格を見直す手順をまとめます。この記事を読むと、見積単価だけで仕入先を変えず、歩留まり・発注ロット・作業時間まで含めて、どの変更が利益を残すか判断できます。
結論から言うと、比較するのは「1kgいくら」ではありません。実際に料理へ使える量で割った可食部1kg当たり原価と、廃棄・保管・仕込みを含む総コストです。
仕入価格が上がったら、値上げの前に5項目を確認する
- 納品書で単価と内容量の変化を確認する
- 可食部1kg当たり原価を計算する
- 発注ロットと廃棄量を比べる
- 品質と仕込み時間を同じ条件で試す
- 変更後の1食粗利を再計算する
帝国データバンクが2026年8月31日に公表した調査では、主要食品メーカー195社による9月の値上げは4,923品目、1回当たりの平均値上げ率は11%でした。これは家庭用食品が中心の調査なので、自店の仕入価格が11%上がるという意味ではありません。ただ、食品メーカーの値上げが続く環境では、過去のレシピ原価をそのまま使わず、最新の納品書で更新する必要があります。
1.納品書で単価と内容量の変化を確認する
まず直近3回と3か月前の納品書を並べます。税区分、入数、内容量、送料、値引きをそろえ、同じ単位へ換算してください。請求額が同じでも、1袋の内容量が減っていれば実質的な単価は上がっています。
全食材を一度に調べる必要はありません。前回の記事で確認した実際原価と理論原価の差が大きい食材、または月間仕入額が大きい上位5品から始めます。
2.可食部1kg当たり原価で比較する
安い食材でも、皮、骨、脂、ドリップなどの除去が多ければ、料理に使える部分の原価は上がります。
可食部1kg当たり原価=仕入単価÷歩留まり率
たとえば、現在品が1kg1,200円・歩留まり80%なら、可食部1kg当たりは1,500円です。候補品が1kg1,080円でも、歩留まり70%なら約1,543円です。見積単価は120円安くても、実際に使える部分では候補品の方が約43円高くなります。
| 比較項目 | 現在品 | 候補品 |
|---|---|---|
| 仕入単価 | 1,200円/kg | 1,080円/kg |
| 歩留まり率 | 80% | 70% |
| 可食部原価 | 1,500円/kg | 約1,543円/kg |
| 判断 | 基準 | 約43円高い |
これは判断方法を示す計算例であり、特定食材の実績ではありません。歩留まりは同じ担当者が同じ下処理で3回量り、平均を使います。
3.発注ロットと廃棄量を比べる
大容量規格は単価が安くても、使い切れなければ利益を失います。直近4週間について、発注量、使用量、月末在庫、期限切れ・品質劣化による廃棄量を確認します。
農林水産省が2026年6月30日に公表した推計では、2024年度の食品ロスは461万トン、うち事業系は237万トン、外食産業は70万トンでした。自店の損失額を示す数字ではありませんが、仕入れと保管を見直す必要性の背景になります。同省の飲食店向け好事例集でも、仕入時の工夫、保管時の工夫、食品廃棄物量の把握が整理されています。
比較時は次の式で、廃棄分も金額へ変換します。
実質仕入コスト=購入金額+送料-返品・値引き+廃棄原価
4.品質と仕込み時間を同じ条件で試す
仕入先を変える前に、主力商品1品で少量テストをします。味、サイズのばらつき、加熱後重量、仕込み時間、保管日数、クレームにつながる差を記録してください。
カット済み食材は単価が高くても、下処理時間と廃棄が減る場合があります。反対に、安い食材でも選別や掃除に時間がかかれば、人件費を含む総コストは上がります。現場の作業時間を無視して「安い仕入先へ変えた」と判断しないことが重要です。
5.変更後の1食粗利を再計算する
候補品で試作したら、1食の使用量と可食部原価から新しい材料原価を出します。次に、販売価格から材料原価と販売連動費を引き、1食粗利を比較します。
仕入規格を変えて1食原価が20円下がり、月500食売れるなら、単純計算で月1万円の改善です。ただし、仕込み時間の増加、廃棄、品質低下で失う売上は別に確認します。商品別の優先順位が未整理なら、先に飲食店のABC分析で対象商品を絞ってください。
相見積りで価格だけを聞かない
仕入先へ相談するときは、商品名だけでなく、月間使用量、希望規格、納品頻度、欠品時の代替、最低発注量、送料、価格改定の連絡方法まで確認します。既存の取引先にも、規格変更、小分け、納品頻度、代替品を相談してください。
東京商工リサーチは2026年9月8日公表の「物価高」倒産調査で、2026年1〜8月累計を583件、前年同期比22.4%増と集計しています。ただし、これは飲食店だけの件数ではありません。危機感を煽る材料ではなく、仕入コスト上昇を放置しない背景として捉えます。
今日から使う仕入見直しチェックリスト
- 月間仕入額が大きい食材を5品に絞った
- 3か月前と直近3回の単価・内容量を同じ単位で比較した
- 歩留まりを3回量り、可食部原価を出した
- 発注ロット、在庫、廃棄を4週間分確認した
- 候補品を主力商品1品で試作した
- 仕込み時間と品質差を記録した
- 変更後の1食粗利と月間影響額を計算した
- 価格以外の条件も仕入先へ確認した
自分でできる範囲と、相談した方がよい基準
1店舗で上位5品の納品書、歩留まり、廃棄量をそろえられるなら、まずは自店で比較できます。一方、複数店舗で規格がばらばら、仕入先ごとの条件を金額化できない、品質を落とさず原価を下げる候補が決められない、値上げと仕入変更の優先順位がつかない場合は、第三者と整理すると進めやすくなります。
まとめ:仕入単価ではなく、使える量と総コストで決める
仕入価格が上がったときは、すぐに全品値上げや取引先変更をするのではなく、月間仕入額が大きい5品から確認してください。納品書、歩留まり、発注ロット、廃棄、仕込み時間、1食粗利を同じ条件で比べると、価格だけでは見えない損失を避けられます。
LINE無料相談の対象:仕入価格の上昇で利益が残らず、仕入先・食材規格・メニュー価格のどこから見直すか決めたい飲食店オーナーです。相談では、比較する5品、可食部原価、廃棄と作業時間、変更後の粗利を整理します。直近3か月の納品書、対象商品のレシピ、月間販売数、廃棄記録をご準備ください。内容を確認した後、自己対応できる範囲と必要な支援を分けてご案内します。
出典
- 帝国データバンク「食品主要195社 価格改定動向調査―2026年9月」(2026年8月31日)
- 農林水産省「食品ロス量(2024年度推計値)の公表」(2026年6月30日)
- 農林水産省「飲食店等の食品ロス削減のための好事例集」
- 東京商工リサーチ「2026年8月の『物価高』倒産」(2026年9月8日)

