赤字が3か月続き、「金融機関や専門家へ何を見せればよいか分からない」「改善策を書いても数字につながらない」と悩む小規模飲食店オーナーへ。
この記事では、相談前のたたき台として使える経営改善計画を、現状、利益目標、資金繰り、行動、検証の5項目で作る手順を解説します。希望的な売上目標ではなく、赤字をいくら、いつまでに、何で埋めるかを数字で説明できる状態がゴールです。
私は飲食業界に20年携わり、元統括料理長として40拠点のマネジメントを経験しました。調理師・製菓衛生師に加え、簿記2級とビジネスマネジャーの資格も持っています。現場の改善案は、担当者、期限、確認する数字まで決めて初めて計画になります。
飲食店の経営改善計画は「赤字を止める行動表」です
経営改善計画は、きれいな事業紹介資料ではありません。現在の損益と資金繰りを出発点に、赤字の原因、改善後の数値、実行する施策、確認日を一本につなぐものです。
中小企業庁の早期経営改善計画策定支援では、経営改善計画の主な内容として、資金繰り計画、ビジネスモデル俯瞰図、アクションプランを挙げています。日本政策金融公庫も経営改善計画書、記入例、策定の手引を公開しています。
公的制度へ申請する正式書類と、店内で使う改善計画は同じではありません。ただし、お金の動き、利益の構造、誰がいつ何をするかをそろえる考え方は共通します。まず自店用のたたき台を作り、制度利用や金融支援が必要な場合は最新様式と対象要件を確認してください。
計画を作る前に集める資料
書き始める前に、次の資料を1か所へ集めます。数値が分からない欄を推測で埋めず、「未確認」として確認先を決めることが重要です。
- 直近12か月の月別損益計算書
- 直近3か月の売上日報、客数、客単価、営業日数
- 現在の預金残高と、8週間先までの入出金予定
- 借入金ごとの残高、毎月返済額、返済日
- 家賃、リース、固定給、仕入、決済・デリバリー手数料の明細
損益と現金は別に確認します。利益が出ていても、借入元金返済、設備投資、売掛金・買掛金の時差で現金が不足することがあります。先に8週間の資金繰り表を作ると、計画に使える期限を把握できます。
経営改善計画を作る5項目
1.現状を月別の数字で書く
最初に、直近12か月の売上、変動費、固定費、営業損益、借入返済、月末現金残高を並べます。季節要因や一時的な修繕費を分け、赤字が「売上不足」「変動費率の悪化」「固定費負担」のどこから出ているかを確認します。
月商だけでなく、客数、客単価、営業日数、主要商品の粗利も補助指標にします。損益分岐点を1日客数まで出す手順を使うと、売上目標を現場の人数へ分解できます。
2.利益目標と期限を決める
「売上を上げる」ではなく、現状の赤字額、損益分岐点との差、黒字化の期限を記載します。期限は資金余力より後ろに置けません。
例えば、現在の月商が360万円、変動費率35%、固定費260万円なら、簡易的な営業損益は次のとおりです。
360万円 ×(1 − 35%)− 260万円 = マイナス26万円
損益分岐点売上高は400万円です。計画には「月商400万円」だけでなく、「月26万円の赤字を、どの改善効果で埋めるか」まで書きます。
3.資金繰りと返済を分けて書く
利益計画には借入元金返済が費用として表れませんが、現金は減ります。そのため、損益計画とは別に月次または週次の資金繰り表を作ります。
売上入金、仕入支払、給与、家賃、税・社会保険料、借入返済、設備支出を日付単位で置きます。融資や補助金は、決定前に確定入金として計上しません。資金不足が見える週がある場合は、改善施策の結果を待たず、金融機関や該当分野の専門家へ早めに相談します。
4.行動を「担当・期限・効果」で書く
改善策は、誰が、いつまでに、どの数字を、いくら変えるかまで決めます。複数施策を同時に始めると効果を判定しにくいため、実行順も記載します。
| 順番 | 行動 | 期限 | 確認する数字 | 月次効果の仮説 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 低粗利商品の価格・分量・仕入を見直す | 1週目 | 変動費率 | 35%→33% |
| 2 | 売上を落とさない範囲で重複シフトを直す | 2週目 | 人時売上高、月間人件費 | 固定的支出を月8万円削減 |
| 3 | 空席時間帯の予約・再来店施策を1本実行する | 3〜4週目 | 1日客数、客単価 | 1日6人増 |
この例で月商360万円の変動費率を33%へ下げ、固定費を252万円にし、客単価1,250円で1日6人を26営業日増やせた場合、月商は379万5,000円です。
379万5,000円 × 67% − 252万円 = 2万2,650円
モデル上は月26万円の赤字から月2万2,650円の黒字へ変わります。ただし、これは計算説明用の仮定で、実在店舗の数値や改善実績ではありません。施策同士の影響が重なるため、実際は週ごとの結果を反映して更新してください。
5.週次と月次の検証日を決める
計画は作成日より更新日が重要です。毎週は売上、客数、客単価、変動費率、人時売上高、現金残高を確認し、毎月は営業損益、返済後の現金増減、施策ごとの実績を見ます。
未達のときは「努力不足」で終わらせず、客数、客単価、営業日数、変動費率、固定費のどの前提が外れたかを修正します。継続・縮小・撤退準備の判断期限は、13週間の赤字改善計画と合わせて管理してください。
2026年の早期経営改善計画策定支援で確認する点
中小企業庁は2026年3月26日、早期経営改善計画策定支援と経営改善計画策定支援の手引き・FAQ等の改定を公表しました。金融機関以外の支援機関が支援する早期枠は2026年3月31日から、金融機関が支援する早期枠と通常枠は2026年5月1日から改定が適用されています。
早期経営改善計画策定支援は、認定経営革新等支援機関の支援を受けて、資金繰り計画、ビジネスモデル俯瞰図、アクションプランなどを作成する際、専門家費用の3分の2を補助する制度です。2026年改定では補助上限額の引き上げや、計画への実態貸借対照表の追加などが示されています。
対象要件、補助上限、必要書類、利用できる支援機関は申請時点の手引きで確認してください。C'est parti&Hへの相談と、公的制度の申請支援は同じものではありません。制度利用が必要な場合は、認定経営革新等支援機関や取引金融機関へ確認します。
自分で作れる範囲と、専門家へ相談する基準
自分でたたき台を作りやすい状態
- 直近12か月の月別損益と現在の現金残高が分かる
- 借入残高、毎月返済額、税・社会保険料の支払予定が分かる
- 赤字の主因を1つに絞り、担当者と期限を決められる
- 週次で実績を更新する時間を確保できる
早めに相談したい状態
- 3か月以上赤字が続き、黒字化の期限を決められない
- 8週間以内に現金不足が見込まれる
- 税、社会保険料、家賃、仕入代金、返済に遅れがある
- 返済条件の変更や追加の金融支援を検討している
- 継続、縮小、事業譲渡、撤退準備を比較する必要がある
返済条件、税務、法務、債務整理が関係する場合は、取引金融機関、税理士、弁護士、中小企業活性化協議会など、該当分野の専門家へ相談してください。
今日作る経営改善計画チェックリスト
- 直近12か月の売上、変動費、固定費、営業損益を月別に並べた
- 現在の現金残高と8週間の入出金予定を確認した
- 借入残高、毎月返済額、支払日を記載した
- 損益分岐点と現在の赤字額を計算した
- 改善策ごとに担当者、期限、確認指標、想定効果を書いた
- 複数施策の実行順を決めた
- 週次と月次の更新日をカレンダーへ入れた
- 未確認の数字を推測で埋めず、確認先を決めた
まとめ
飲食店の経営改善計画は、現状、利益目標、資金繰り、行動、検証の5項目で作れます。大切なのは、売上目標だけで終わらせず、赤字額を埋める施策を担当者、期限、数字まで具体化することです。
赤字が3か月続いているなら、今日中に直近12か月の損益と8週間の資金繰りをそろえ、最初に変える数字を1つ決めてください。公的制度や金融支援が必要な場合は、最新の要件を確認したうえで適切な支援機関へ相談します。
経営改善計画のたたき台をLINEで整理します
対象:赤字が3か月続き、改善策と黒字化の期限を数字で整理したい小規模飲食店オーナー
相談で整理できること:現在の赤字額、資金余力、最初に変える数字、担当者と確認期限
準備する情報:直近12か月の月商と営業損益、現在の現金残高、借入残高と毎月返済額、客数、客単価。口座番号や個人情報は送らず、まず合計額だけで構いません。
相談後の流れ:現状を整理し、自分で進める範囲と、税務・金融・法務、公的制度など別の専門家へ確認すべき範囲を分けます。相談だけで契約が決まることはありません。

