
進化系フライメニューやクラフトティーが、今年も飲食業界のトレンド予測記事を賑わせている。この記事を読み終える頃には、話題の食材をメニューに入れる前に何を確認すればいいか、原価変動リスクとロスという2つの物差しで、自分の店の数字に置き換えて判断できるようになっている。
金曜のランチタイム、SNSで話題の進化系フライを見て「うちもやろう」と仕入れ先に電話をかけたら、翌週には仕入れ値が2割上がっていた——という話を、顧問先の厨房でもここ数カ月で何度か聞いた。話題の食材は需要が急に伸びるぶん、仕入れ値も乱高下しやすい。「話題だから」だけで仕入れを決めると、原価がブレたまま気づかないうちに利益を削っていることが多い。
なぜ「話題だから」の仕入れは原価を跳ねさせるのか
トレンド食材は、メディアやSNSで取り上げられた瞬間に需要が集中する。卸の側も相場を強気に見直すため、通常仕入れより1〜3割高い値が付くことは珍しくない。しかも話題が続く期間は読みづらく、3カ月で下火になることもあれば、定番化することもある。ここを見誤ると、仕入れた食材が冷凍庫の奥で賞味期限を迎える、いわゆる「ロス在庫」になる。
以前、統括していたホテルの洋食部門でも、季節限定食材を大量発注してから需要予測が外れ、廃棄コストが想定の3倍近くに膨らんだことがあった。そこから「話題の食材ほど、まず小さく試す」という原則に切り替えている。
判断基準1:仕入れ値の変動幅を仕入れ先に確認する
発注前に、直近1カ月の相場推移と「今後値上がりする可能性があるか」を仕入れ先に直接聞く。口頭でいいので記録に残す。相場が不安定な食材は、単価でなくメニュー価格への転嫁ルールをあらかじめ決めておく。
判断基準2:最低ロットと保存期限を確認する
大量仕入れほど単価は下がるが、使い切れなければロスになる。最低ロットと賞味期限を仕入れ先に確認し、自店の想定販売数で何日以内に使い切れるかを計算してから発注量を決める。
判断基準3:数量限定・期間限定で小さくテストする
いきなりレギュラーメニュー化せず、1〜2週間の数量限定で出す。出数と原価率を記録し、想定の6割以上売れて初めて本導入を検討する。テストの間はSNSでの反応も同時に見ておくと、需要の継続性が読みやすい。
判断基準4:代替材料での原価シミュレーションをしておく
トレンド食材が値上がりした場合に備え、味の方向性が近い代替材料でも原価計算をしておく。トレンドが続いても仕入れ値が跳ねた瞬間に切り替えられる状態を作っておくことが、利益を守る一番の保険になる。
判断基準5:既存オペレーションとの相性を見る
新しい調理工程が増えるほど、ピークタイムの提供スピードが落ちる。話題性だけで飛びつくと、厨房が回らなくなり、既存メニューの提供にも影響が出ることがある。導入前に、忙しい時間帯を想定した実働テストをしておきたい。
判断基準6:客単価への転嫁可能性を検証する
原価が上がる食材は、それに見合う価格で出せるかどうかが分かれ目になる。話題性があるうちは高めの価格設定でも受け入れられやすいが、ブームが落ち着いた後の価格は据え置けるかも合わせて考えておく。
判断基準7:ブームの継続期間を見極める
SNS発の食材トレンドには、賞味期限がある。過去の傾向から「このジャンルは長続きしやすいか」を見て、定番化を狙うのか、期間限定商品として売り切るのかを最初に決めておくと、在庫判断がぶれない。
まとめ
- 話題の食材ほど仕入れ値の変動幅を先に確認する
- 最低ロットと保存期限からロスの起きにくい発注量を逆算する
- 数量・期間限定の小さなテストで需要を測ってから本導入する
- 代替材料の原価も同時に計算し、値上がり時の切り替え先を用意する
- 既存オペレーションへの負荷とブームの継続期間も判断材料に入れる
今夜の営業が終わったら、今の仕入れの中でSNSで話題になっている食材を1つ選び、直近1カ月の仕入れ値の推移を仕入れ先に確認する電話を1本入れてみてほしい。それだけで、次の発注判断の精度が変わる。
実際にどのくらいの発注量・原価率でテストを組み、どこで本導入かロス切りかを判断したかという数字のシミュレーションと事例は、有料note版でケーススタディとして解説している。自店の条件に近い数字で判断基準を組み立てたい方はあわせて読んでみてほしい。
原価率や仕入れの仕組みを整えたいという相談は、C’est parti&Hでもよく受ける内容だ。個別の店舗の数字を見ながら、無理のない仕組みに落とし込むところまで一緒に整理している。興味があれば、料金プランや無料相談から気軽に問い合わせてほしい。

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