赤字が3か月続き、毎月の借入返済を続けると現金が減る一方で、「金融機関へ何を見せ、どの時点で相談すべきか」が分からない小規模飲食店オーナーへ。
この記事では、借入一覧、13週間の資金繰り、返済後の現金余力、改善策、相談条件の5項目を整理します。次回返済の前に不足日と不足額を把握し、自分で改善できる範囲と、金融機関・公的支援・専門家へ相談する範囲を分けることがゴールです。
私は飲食業界に20年携わり、元統括料理長として40拠点のマネジメントを経験しました。調理師・製菓衛生師に加え、宅地建物取引士、簿記2級、ビジネスマネジャーの資格も持っています。返済条件そのものを決めるのは金融機関ですが、相談前に店舗の数字と実行案を整理することはできます。
結論:返済額だけでなく「返済後に現金が残るか」を見ます
借入金の元本返済は、損益計算書の費用ではありません。そのため、会計上の利益が出ていても、返済後に手元資金が不足することがあります。逆に、返済を減らすだけでは本業の赤字が残り、問題を先送りする場合があります。
まず、次の式で返済後の現金余力を確認します。
返済後の現金余力 = 現金収入 − 現金支出 − 税金・臨時支出の積立 − 借入返済額
ここでいう現金余力は、納税などに使う資金を取り分けた後の「自由に使える資金」の増減です。現金支出からは借入元利返済と別枠の積立を除き、二重に引かないようにします。積立は口座全体からの支出ではないため、実際の資金繰り表では積立と実際の納付・支払を区別してください。
この数字がマイナスなら、借入残高や利益率だけを見ず、何月何日に残高が不足するかを資金繰り表へ落とします。
J-Net21は、借入返済額、売掛・買掛金などの入出金予定を時期・金額・名目で洗い出し、月次資金繰り表で返済額の妥当性と悪化原因を確認する流れを案内しています。改善後も返済負担が重い場合は、金融機関へ返済条件の見直しを相談する考え方です。
借入返済の相談前に整理する5項目
1.借入一覧
金融機関ごとに、借入残高、毎月の元金・利息、返済日、完済予定日、担保・保証の有無を1行で並べます。返済額を合計するだけでなく、どの口座から何日に落ちるかまで確認してください。
2.13週間の資金繰り
週ごとの開始残高、現金売上、キャッシュレス入金、仕入、給与、家賃、税・社会保険料、借入返済、臨時支出、終了残高を並べます。月合計では残るように見えても、給与や返済の直前に不足する場合があるためです。
すでに公開している飲食店の8週間資金繰り表を使う場合は、対象期間を13週間まで伸ばし、借入返済を金融機関別に分けてください。
3.返済後の現金余力
営業で得た現金から、通常の現金支出、税金・臨時支出の積立、借入返済を引きます。返済前はプラスでも返済後にマイナスなら、返済負担で自由資金が減る状態です。返済前からマイナスなら、本業の収益、入金時期、在庫、税金・臨時支出のどこに原因があるかを確認します。
4.本業の改善策
「売上を上げる」ではなく、期限と金額を入れます。例えば、値付けと商品構成で月10万円、シフトで月8万円、家賃・リース・保守費で月7万円など、根拠を示せる項目に分けます。
必要売上を客数へ変換する場合は、損益分岐点を1日客数まで計算する方法を使い、改善後の数字を5項目の経営改善計画へつなげます。
5.相談したい条件と期間
「返済が苦しい」だけでなく、現行返済を続けた場合の不足日・不足額、本業改善後に継続できる返済額の試算、必要な期間、計画を見直す日を整理します。希望どおりの条件変更や借換えが認められるとは限らず、判断は金融機関ごとに異なります。
計算例:返済前は20万円残るのに、返済後は15万円減る店
以下は計算説明用の架空例です。実在店舗の数字や支援実績ではありません。
- 月初の自由に使える現預金(既存の積立を除く):120万円
- 月間の現金収入:400万円
- 仕入・給与・家賃などの現金支出:365万円
- 税金・臨時支出の積立:15万円
- 借入返済:35万円
返済前の現金余力は20万円です。
400万円 − 365万円 − 15万円 = 20万円
そこから35万円を返済すると、月15万円ずつ現金が減ります。
20万円 − 35万円 = マイナス15万円
他の入出金がなく、毎月同じ条件で資金を取り分ける単純計算では、自由に使える現預金120万円を8か月で使い切ります。積立を含む総預金残高がゼロになる時期や、実際の支払不能日を示す計算ではありません。
120万円 ÷ 15万円 = 8か月
スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
| 案 | 本業改善 | 返済額 | 返済後の現金余力 | 確認点 |
|---|---|---|---|---|
| 現状継続 | 0万円 | 35万円 | −15万円 | 現金が減り続ける |
| 本業だけ改善 | 月15万円 | 35万円 | 0万円 | 積立を超える支出への追加余力なし |
| 相談用試算A | 月15万円 | 25万円 | +10万円 | 条件変更の可否は未確定 |
| 相談用試算B | 月25万円 | 25万円 | +20万円 | 改善根拠と期限が必要 |
相談用試算A・Bは、金融機関の承認や将来の成果を示すものではありません。「どの返済額なら現金を減らさず、その間に何を改善するか」を説明するための比較です。
金融機関へ持っていく資料
- 借入一覧と返済予定表
- 直近2〜3期の決算書、直近の試算表
- 13週間の資金繰り表と月次資金繰り計画
- 店舗別・事業別の売上、原価、人件費、家賃、営業利益
- 赤字原因と、金額・担当・期限を入れた改善策
- 現行条件と相談用条件を並べた返済後残高の比較
- 税・社会保険料、仕入、給与などの支払状況
J-Net21も、返済条件の見直しや借換えを相談する際、金融機関から経営改善計画書や資金繰り表を求められる場合があると説明しています。新しい借入で一時的な不足を埋める話だけでなく、その後の収支改善と返済継続を説明できる形にします。
相談先を分けます
取引金融機関・日本政策金融公庫
まず現在の借入先へ、返済日前に相談できるよう資料を整えます。日本政策金融公庫の国民生活事業は、事業資金の借入・返済に関する予約相談と事業資金相談ダイヤルを案内しています。相談窓口の存在は、条件変更が認められることを保証するものではありません。
よろず支援拠点・中小企業活性化協議会
経営改善の整理には、全国47都道府県のよろず支援拠点があります。借入負担が重く、金融支援を伴う本格的な改善や再生が必要な場合は、中小企業活性化協議会が金融機関・税理士・弁護士などと連携して支援します。
中小企業庁の経営改善計画策定支援は、借入返済負担などの財務問題を抱え、自力で計画を作ることが難しい中小企業・小規模事業者を対象にしています。利用要件や費用負担は最新の公式案内で確認してください。
税理士・弁護士などの専門家
税務、複数金融機関との調整、担保・保証、税・社会保険料の滞納、債務整理、廃業判断が関係する場合は、該当分野の専門家へ確認します。個別契約や法的手続を、一般的な記事だけで判断しないでください。
自分で整理できる範囲と、早めに相談したい状態
自分で5項目を作りやすい状態
- 返済の遅れがまだない
- 借入先、残高、返済額、返済日が分かる
- 入出金予定を13週間先まで確認できる
- 店舗別の利益と改善策を数字で説明できる
早めに外部へ相談したい状態
- 次回の返済、給与、仕入、家賃、税・社会保険料のどれかが不足する
- 複数の金融機関があり、条件を個別に整理できない
- 新しい借入で既存返済を回す状態が続いている
- 本業の赤字と返済負担が同時に続いている
- 個人保証、担保、滞納、差押え、廃業・事業譲渡の判断が関係する
家賃負担も同時に見直す場合は、前日の家賃比率から継続・交渉・縮小移転を比べる方法で、返済とは別の改善額を計算してください。
今日やるチェックリスト
- すべての借入先、残高、返済額、返済日を1枚にした
- 借入元本と利息を分けた
- 13週間の入出金と週末残高を作った
- 最初に残高が不足する日と金額を特定した
- 返済前と返済後の現金余力を分けた
- 本業改善を金額・担当・期限で書いた
- 現行条件と相談用条件の残高を比較した
- 返済日前に取引金融機関へ相談できる日を確認した
- 税務・法務・再生支援が必要な項目を分けた
まとめ
借入返済が苦しいときは、返済額だけを減らす発想から始めず、借入一覧、13週間の資金繰り、返済後の現金余力、本業の改善策、相談条件の5項目を同じ資料にします。
赤字が3か月続いているなら、今日中に最初の不足日と不足額を出してください。返済前から現金が減るのか、返済後に減るのかで、優先する改善と相談先が変わります。
返済日前に、5項目をLINEで整理します
対象:赤字が3か月続き、借入返済後に現金が減り、金融機関へ何を見せるか整理したい小規模飲食店オーナー
相談で整理できること:借入一覧、13週間の不足日・不足額、返済後の現金余力、本業改善の優先順位、金融機関や公的支援へ確認する項目
準備する情報:借入先ごとの残高・月返済額・返済日、現在の現預金合計、直近3か月の売上・仕入・給与・家賃・その他固定費、税金などの臨時支出予定。口座番号、契約番号、個人情報は送らず、まず合計額だけで構いません。
相談後の流れ:LINEの無料相談で数字を整理し、自分で進める改善、取引金融機関へ確認する事項、税理士・弁護士・中小企業活性化協議会などへ確認すべき範囲を分けます。返済条件の変更を約束するサービスではなく、必要な場合だけ支援範囲と見積もりをご案内します。

