売上は立っているのに、月末の給与・家賃・仕入代金を払った後の現金が読めない。そんな飲食店オーナーに向けて、この記事では8週間先までの資金繰りを5項目で見える化し、現金不足が起きる週を早めに見つける方法を整理します。
飲食業界20年、元統括料理長として現場と数字の両方を見る立場から、私は損益だけでなく「いつ入金され、いつ支払いが出るか」を分けて確認することが大切だと考えています。今日、通帳と入出金予定を並べれば、自店で対応できる範囲と、金融機関・税理士などへ早めに相談すべき範囲を判断できます。
飲食店は黒字でも現金が不足することがある
東京商工リサーチによると、2026年7月の飲食業倒産は112件で、1997年以降の30年間で最多でした。原因別では「販売不振」が91件、資本金1,000万円未満は93件です。調査対象は負債1,000万円以上の法的倒産であり、この統計だけで個々の倒産原因を断定することはできません。
ここで見るべきなのは、利益と現金の動きが一致しない点です。たとえば売上を計上しても、キャッシュレス決済の入金は後日です。一方で、食材代、給与、家賃、税金、借入返済は、それぞれ決まった日に出ていきます。月の損益が黒字でも、支払日に口座残高が足りなければ営業継続に影響します。
中小企業庁の経営改善支援資料でも、突然の資金不足を避けるため、売掛・買掛の回収支払条件、売上・仕入予定、借入返済、設備投資・修繕予定を確認し、将来の資金収支を計算する考え方が示されています。
資金繰り表に入れる5項目
1.週初の現預金残高
銀行口座と店舗現金を合計し、今すぐ使える金額だけを記入します。未入金の売上や利用予定のない融資枠は含めません。
2.入金予定
現金売上、キャッシュレス決済の入金、デリバリー会社からの入金などを、売上日ではなく実際の入金日で入れます。入金サイクルが複数ある場合は、決済会社ごとに分けるとズレを発見しやすくなります。融資や補助金など、入金額と時期が確定していないものは入金予定に含めず、別途「未確定」として管理します。
3.変動支出
食材、包材、消耗品、外注費など、営業量に応じて変わる支出です。発注日ではなく支払予定日で記入し、月末締め翌月払いなどの条件も確認します。
4.固定・臨時支出
給与、家賃、水道光熱費、社会保険料、税金、借入返済、設備修繕などです。毎月の支出と、特定の週だけ発生する支出を分けます。税金や修繕を落とすと、見かけ上の残高だけが増えてしまいます。
5.週末予測残高
計算式はシンプルです。
週末予測残高 = 週初残高 + 入金予定 - 支出予定
この週末予測残高を翌週の週初残高へつなぎます。日本政策金融公庫も小規模事業者向けに資金繰り表の記入例を公開しています。自店用に作るときも、まず入金と支出の時期を分けるところから始めてください。
計算例:第7週に10万円不足すると分かる
次は、説明用に作った架空店舗の例です。単位は千円で、8週間は今日着手しやすい確認期間として設定しています。公的制度の標準期間を示すものではありません。
| 週 | 週初残高 | 入金 | 支出 | 週末予測残高 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 1,500 | 900 | 780 | 1,620 |
| 2 | 1,620 | 880 | 1,150 | 1,350 |
| 3 | 1,350 | 920 | 1,280 | 990 |
| 4 | 990 | 950 | 1,330 | 610 |
| 5 | 610 | 900 | 1,100 | 410 |
| 6 | 410 | 940 | 1,250 | 100 |
| 7 | 100 | 980 | 1,180 | ▲100 |
| 8 | ▲100 | 1,000 | 1,150 | ▲250 |
第7週の計算は、100+980-1,180=▲100、つまり10万円の資金不足見込みです。この例のマイナスは、その週までに手当てが必要となる不足額であり、実際の預金残高そのものを示すものではありません。月単位の損益だけを見ていると、第6週まで予測残高がプラスなので対策が遅れるおそれがあります。
この表で重要なのは、赤字になってから支払いを止めることではありません。第2週の段階で、第3〜7週に何が重なるのかを分解します。カード入金日、給与、家賃、税金、借入返済、設備修繕のどれが残高を押し下げるのかを確認すれば、相談先と準備資料が具体的になります。
現金不足が見えたときの判断順序
- 入力漏れをなくす:税金、社会保険料、賞与、修繕、借入返済を追加します。
- 日付を確定する:決済会社、仕入先、給与、家賃の実際の入出金日を確認します。
- 原因を1つに分ける:売上不足、入金の遅れ、原価、人件費、固定費、臨時支出のどれが最大かを見ます。
- 営業改善と資金対応を分ける:メニュー、発注、シフトで改善する項目と、金融機関・税理士・公的窓口へ相談する項目を分けます。
- 毎週、予測と実績を更新する:差額の理由を1行で残し、翌週以降の予測へ反映します。
前回の記事で粗利率・人件費率・営業利益率を確認した方は、飲食店の営業利益率を3数字で診断する手順と今回の資金繰り表をつなげると、利益の問題と入出金時期の問題を分けやすくなります。
自店で対応できる範囲と、専門家へ相談する基準
通帳と支払予定が揃っており、不足原因が1項目に絞れ、通常営業の改善で回復見込みを説明できるなら、まず自店で毎週更新できます。
一方、次のどれかに当てはまる場合は、支払期限の直前まで待たずに相談してください。
- 8週間以内に残高がマイナスになる
- 税金、社会保険料、給与、借入返済など複数の支払いが重なる
- 売上はあるのに、残高が減る理由を説明できない
- 借入、返済条件、税務判断が必要になる
借入や返済条件は金融機関、税務判断は税理士など、内容に合う専門家へ確認が必要です。C'est parti&Hでは、融資・税務判断や成果保証ではなく、飲食店の売上・仕入・人件費を整理し、最初に変える項目と今は触らない項目を決める支援を行っています。
今日やる資金繰りチェックリスト
- 銀行口座と店舗現金を合計した
- 現金売上とキャッシュレス入金を分けた
- 決済会社ごとの入金日を確認した
- 仕入先ごとの支払日を確認した
- 給与・家賃・光熱費を入れた
- 税金・社会保険料・借入返済を入れた
- 修繕・更新など臨時支出を入れた
- 8週間の週末予測残高を計算した
- 残高を最も下げる原因を1つ選んだ
- 毎週更新する曜日と担当者を決めた
まとめ:利益の次は、現金が残る日を確認する
資金繰り表は、難しい予算書ではありません。週初残高、入金、変動支出、固定・臨時支出、週末予測残高の5項目を8週間並べれば、現金不足が起きる時期と原因を早めに確認できます。
ご相談が向いているのは、8週間以内に残高不足が見える方、原価・人件費・固定費の優先順位が決まらない方、金融機関や税理士へ相談する前に飲食店の数字を整理したい方です。LINEでは、資金繰り表から最初に確認する項目を整理します。
ご準備いただく情報は、直近の口座残高、8週間の入金予定、仕入・給与・家賃・税金・返済の支払予定です。内容を確認後、必要に応じて30分相談で最大のボトルネックと必要資料を整理し、支援範囲を決めます。
出典

