
「求人を出しても応募が来ない」「やっと採用できたと思ったら3か月で辞めてしまった」——そんな悩みを抱える飲食店オーナーが急増しています。帝国データバンクの調査によれば、2026年現在、飲食業で人手不足を実感している事業者は全体の89.2%にのぼり、全業種のなかで最も高い水準となっています。少子高齢化・労働人口の減少・若者の価値観の変化が重なり、「以前と同じ採用活動」では通用しなくなっているのが現実です。
本記事では、2026年の最新データをもとに、飲食店が今すぐ取り組むべき採用・育成・定着の具体的な戦略を5つ紹介します。経営規模にかかわらず実践できる内容ですので、ぜひ自店に置き換えながら読み進めてみてください。
1. 「時給を上げれば来る」は過去の話――求人媒体の使い方を見直す
アルバイト・パートの接客・給仕従事者の有効求人倍率は2026年も3.5〜4.0倍前後で推移していると言われており、1人の求職者に対して3〜4件の求人が競合している計算です。この状況では、時給を少し上げるだけでは差別化になりません。
まず見直したいのが求人票の内容です。「時給・シフト・仕事内容」の3点だけを並べた求人は埋もれがちです。代わりに「なぜこの店で働くのか」という理由を伝えましょう。たとえば「まかないは毎日シェフが作る本格料理」「週2日・1日3時間からOK」「調理技術を学びたい人を全力サポート」といった求職者のメリットになる情報を具体的に書くことで、反応率が変わります。
また、求人媒体の選択も重要です。20代には求人系アプリ(タウンワーク・インディード等)だけでなく、TikTokやInstagramでのスタッフ募集動画が有効とされています。「職場の雰囲気を15秒で見せる」動画は採用コストを抑えながら応募数を増やせる手法として注目されています。
2. 採用コストより定着率——「辞めない環境」づくりが最大の採用策
飲食業の離職率の高さは業界の課題として長く語られてきました。採用してもすぐ辞められてしまえば、そのたびに求人費用・研修コスト・戦力化までの時間がかかります。逆に言えば、定着率を1割改善するだけで採用費を大幅に削減できます。
定着率を高めるポイントとしてよく挙げられるのは以下の点です。
- 入店後1か月のフォロー強化:最初の1か月に不安を感じて辞めるケースが多い。週1回でもマネージャーが1on1で話す時間をつくるだけで定着率が上がると言われています。
- シフトの希望優先:「希望が通らない」は退職理由の上位。週ごとの希望申請ルールを明確にし、できる限り希望シフトで組む姿勢を見せましょう。
- 成長を見える化する:「何ができたら時給が上がる」「どのステップで調理補助に昇格できる」といったキャリアステップを明示することで、モチベーションが持続しやすくなります。
- 感謝・承認の文化づくり:小さな「ありがとう」や「今日のホール対応よかったよ」という声かけが、働きやすさの土台になります。コストゼロでできる最強の定着策とも言えます。
3. 省人化テクノロジーの活用——「人を増やす」から「人の負担を減らす」へ
人を増やすことが難しい今、1人当たりの生産性を上げるDX導入が有効な選択肢として普及しています。具体的には次のような施策が現場で効果を上げています。
- モバイルオーダー・セルフオーダー端末:注文受けの工数を大幅に削減。客席数が多い店ほど効果が大きく、スタッフはサービス品質に集中できるようになります。
- 配膳ロボット:初期費用はかかりますが、月額リース型で導入できるサービスも増えており、ランチ営業など混雑時のホール人員を実質1名分カットできた事例も報告されています。
- シフト管理・勤怠アプリ:紙やLINEでのシフト調整を専用アプリに切り替えるだけで、店長の管理業務が週に数時間削減できると言われています。その分、スタッフとのコミュニケーションや調理に時間を使えます。
「DXは大手のやること」と思われがちですが、月額数千円〜のクラウドツールが増えており、小規模店でも導入のハードルは下がっています。まずは一つのオペレーションをデジタル化することから始めてみましょう。
4. 外国人材の活用——特定技能の最新動向を把握する
飲食業界では特定技能(在留資格)を活用した外国人材の雇用が広がっており、2025年時点で飲食業に従事する外国人労働者は約28万人に達していると言われています。しかし、2026年4月13日をもって、外食業の特定技能1号の新規受け入れが一時停止となりました。国内在留者数が上限の5万人に近づいたことが理由です。
この制度変更を受け、今後の外国人採用では次の点を押さえておく必要があります。
- 既に在籍している特定技能1号スタッフの特定技能2号への移行サポートを検討する(在留期間の延長・永続雇用につながる)
- 技能ビザ(料理人)など別の在留資格での採用可能性を確認する
- 留学生のアルバイト採用は引き続き可能なため、大学・専門学校への求人票掲示を活用する
外国人材の採用・就労管理には複雑な法的手続きが伴います。実際の採用を検討する際は、行政書士や専門の支援機関に相談することをおすすめします。
5. 「採用ブランディング」——選ばれる職場をつくる
優秀なスタッフに「ここで働きたい」と思われる職場をどうつくるか——これが2026年の採用競争の本質です。いわゆる採用ブランディングは大手だけの話ではなく、小さな飲食店でも実践できます。
具体的な方法としては、Instagramの「スタッフの一日」ストーリーズや、GoogleビジネスプロフィールにスタッフのQ&Aを掲載するといったことが挙げられます。「ここで働いている人が楽しそう・成長している」という情報を外に発信するだけで、求人へのエントリー率が変わると言われています。
また、既存スタッフからの紹介採用(リファラル採用)も効果的です。「友人・知人を紹介してくれたら謝礼」という仕組みを作ると、文化的に馴染みやすい人材が集まりやすく、定着率も高い傾向があります。紹介した側のスタッフのエンゲージメントも高まるというメリットもあります。
まとめ
- 飲食業の人手不足は89.2%が実感——「以前と同じ採用」はもう通用しない
- 求人票は「なぜここで働くか」を具体的に伝えるコンテンツに刷新する
- 採用費より定着率——入店後1か月のフォローとシフト配慮が鍵
- モバイルオーダーやシフトアプリで1人当たりの負担を減らす省人化を
- 特定技能の新規受け入れ一時停止に伴い、外国人採用の戦略を見直す
- 採用ブランディングとリファラル採用で「選ばれる職場」を目指す
人手不足への対策は、一朝一夕では解決しません。しかし、採用・育成・定着の仕組みをひとつひとつ整えていくことが、長期的に「人が辞めない強い店」をつくることにつながります。
採用・育成や店舗運営の見直しは、飲食店コンサルティングサービスで現場目線でサポートしています。
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